鳥インフルエンザウイルスに対する次亜塩素酸水の効果についての実験結果

鳥インフルエンザに次亜塩素酸水

インフルエンザウイルスはもともと水鳥由来のウイルスです。そこから豚や人の細胞内でもウイルスが増殖できるようになり今に至ります。

そのようにしてウイルスの遺伝子が交配すること(遺伝子再集合)で強毒性(致死率が高くなる)をもったインフルエンザウイルスが誕生します。

参考:新型インフルエンザの脅威とパンデミック

そこで、鳥インフルエンザを拡大させないことが人類にとってとても大切です。次亜塩素酸水がその鳥インフルエンザウイルスを除去するために効果があるかどうかいくつか実証実験が行われています。

その次亜塩素酸水実験の内容と結果についてご紹介したいと思います。

鳥インフルエンザウイルスに対して次亜塩素酸水で除去できる

岐阜大学、東京農工大学大学院の共同研究として鳥インフルエンザウイルスに対する次亜塩素酸の効果に関する評価実験が行われました。

次亜塩素酸(HOCL)溶液を低病原性鳥インフルエンザウイルス(AIV、H7N1)に対するそれらの殺ウイルス能力について実験を行いました。

pH6の50、100および200ppmの含む次亜塩素酸水溶液を用いて有機物(FBS:5%ウシ胎児血清)を鳥インフルエンザウイルスと混合した場合と添加していない場合で比較しました。(次亜塩素酸水溶液をスプレー噴霧する距離はシャーレから1cmまたは30cmで調べました。)

また、pH6の50、100および200ppmの含む次亜塩素酸水溶液を用いて20um以下の粒子で500ml/hで飛散できる噴霧器を使用し、レーヨンシート状に鳥インフルエンザウイルスの不活化ができるか直接暴露させる場合と間接的暴露させる場合について比較しました。

有機物とウイルスを混合しないない場合(FBSなし)では、次亜塩素酸水溶液スプレーした噴霧5秒後に鳥インフルエンザウイルスを1000分の1(検出不可レベルまで)低下させることが可能と分かりました。(ただし、50ppmの次亜塩素酸水溶液の30cmの距離を除いて)

一方、有機物との混合条件(FBSあり)の場合では、次亜塩素酸水溶液の殺ウイルス活性を失いました。

次亜塩素酸水溶液をレーヨンシート上の鳥インフルエンザウイルスに直接した場合、100および200ppmウイルスを10秒間で不活性化することができましたが、50ppmでは、少なくとも3分間を必要としました。

また、間接噴霧した場合(10秒間噴霧した後、皿の蓋はレーヨンシート上のウイルスを次亜塩素酸水溶液にさらすために開ける方法)では、200ppmで接触から10分以内にウイルスを不活性化することができましたが、100ppm以下ではウイルスを不活性化することはできませんでした。

この結果より、次亜塩素酸水溶液を農薬レベルで鳥インフルエンザウイルスを不活性化するために噴霧、スプレーにて使用できることを示唆しています

但し、低濃度の場合は有機物に付着していることで次亜塩素酸の効果は減少してしまうため、一定以上の濃度を保って使う必要があります。

参考:Evaluation of sprayed hypochlorous acid solutions for their virucidal activity against avian influenza virus through in vitro experiments

次亜塩素酸を用いた鳥インフルエンザウイルス除去は可能

帯広畜産大学は、次亜塩素酸水を使って高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)と低病原性鳥インフルエンザウイルス(H9N2)の2種類に対して殺ウイルスがあるかどうか実験を行いました。

摂取したウイルスに酸性と中性の次亜塩素酸水を加えて1分間後測定したところ、中性の次亜塩素酸水(濃度43ppm以上)で10万分の1に減少することが分かりました。

中性領域の次亜塩素酸水の鳥インフルエンザウイルスに対する効果がある濃度は40ppm程度でした。しかし、酸性での次亜塩素酸水で10万分の1に減少させるためには0〜72ppmと幅広い濃度が必要で濃度に依存しませんでした。

その理由として酸性領域では、次亜塩素酸が塩素ガスとして飛散しやすいため濃度との相関関係が中性よりも現れなかったかと推測します。

参考:Virucidal effect of acidic electrolyzed water and neutral electrolyzed water on avian influenza viruses

まとめ

鳥インフルエンザは鶏舎内という密集した中では感染がさらに拡大していきます。詳しく、鳥インフルエンザについて知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

参考:鳥インフルエンザがもたらす人への脅威

そのため、鳥インフルエンザを早めに予防することは非常に有効な手段です。次亜塩素酸水は人にも鳥にも安全に扱うことができ、実証実験でも効果があることが分かりました。

適切な次亜塩素酸の濃度、pHを調整して使うことで鳥インフルエンザウイルスを除去することができます。但し、有機物がある中では濃度も低下しやすいため留意して活用する必要があります。

以上、鳥インフルエンザウイルスに対する次亜塩素酸水の効果についての実験結果についてご紹介しました。