次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムとは違う!次亜塩素酸ナトリウムの特徴について

次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムドラックストア

【追記2019年3月28日】

私たちが普段使用している水道水には塩素が含まれています。その塩素が水に溶けることで「次亜塩素酸」が生成し、その物質がバクテリアを消毒します。

他方、効果の持続性や紫外線によってお水に戻ってしまう特性があり不安定であるためにアルカリ性に調整した「次亜塩素酸ナトリウム」が広く一般家庭や食品工場などで使われております。

水道水の消毒も次亜塩素酸ナトリウムで行なっており、WHO(世界保健機関)の飲料水水質ガイドラインによると、塩素濃度5mg/l(5ppm)とされています。

※毎日水を飲んでも人の健康に影響が生じない濃度だそうです。(東京都水道局)

一方日本は、塩素濃度0.1mg/l以上1mg/l以下(0.1~1ppm)となっていますが、2008年に厚生労働省は「水質基準に関する省令」と「水道施設の技術的基準を定める省令」を一部改正し、塩素濃度0.6mg/l以下から0.4mg/l 以下と強化することとしました。

参考:厚生労働省ホームページ「水道用次亜塩素酸ナトリウムの取扱い等の手引き(Q&A)」

塩素系消毒の代表は次亜塩素酸ナトリウム

次亜塩素酸ナトリウムの製法は、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを反応さて作られます。

2NaOH+Cl2+→NaCl+H2O+NaClO

一般に作られている次亜塩素酸ナトリウムの濃度は、5〜12%のものが多く緑黄色の透明な液です。

pH12〜14と強アルカリ性の水溶液で、NaOH(水酸化ナトリウム)とHOCL(次亜塩素酸)がイオンとしてお水に溶けています。

この製法であると塩化ナトリウム(いわゆる食塩)が同時に生成されますが、低食塩タイプの次亜塩素酸ナトリウムもあります。

次亜塩素酸ナトリウム販売

次亜塩素酸ナトリウム水溶液が使用される理由は?

世界中で消毒のために使用される次亜塩素酸ナトリウムですが、ここまで広く使用されているのでしょうか?こちらでは、メリット、デメリットをご紹介したいと思います。

次亜塩素酸ナトリウムの主なメリット

・安定性、持続性が高いこと

・微生物に広く減菌、除去効果があること

・漂白、洗浄効果があること

・安価に使用できること

・取扱いを間違えなければ安全に使用できること

次亜塩素酸ナトリウムのデメリット

・金属に対しての腐食があること

・アルカリ性なので取扱いに注意が必要なこと

・発ガン性物質と疑われているトリハロメタンを生成すること

・酸と接触すると塩素ガスを発生させること

次亜塩素酸ナトリウムは消毒薬として適している理由として単一物質であり、かつ幅広く菌やウイルスにも効果ことが1番の理由にあげられます。

また、安価であり不燃性で取扱いしやすく、漂白や汚れの洗浄にも使える汎用性の広さから普及しています。

補足:その他、漂白剤の成分は過酸化水素(H2O2)や過酸化ナトリウム(Na2Co3)などがあります。

他方、アルカリ性であるデメリットとして、人体には有害であり、皮膚を溶かしてしまいます。塩素の臭気が強く使用する際は、十分な換気をし、手袋や保護メガネを着用します。

取扱いに注意が必要なので、乳幼児の手の届かない場所で管理を必ずしてください。

毎年、次亜塩素酸ナトリウムの誤飲事故が多々起きています。誤飲すると胃液の塩素と反応して塩素ガスが体内で発生してしまい悲惨な事故になりかねません。家庭で次亜塩素酸ナトリウムを使用される場合は、くれぐれも注意してくださいね。

次亜塩素酸ナトリウムは紫外線を吸収して分解していく

次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムどちらにも共通の特徴ですが、紫外線を吸収して分解していきます。もちろん、紫外線と一概に行っても光にも波長があり吸収しやすい、しにくいはあります。

つまり、有効塩素濃度は太陽光の紫外線によって分解されていきます。

次亜塩素酸ナトリウムの紫外線分解実験では、2時間紫外線に晒した後の透明のペットボトルでは95%は消失し、5%以下の有効塩素濃度になってしまいます。

一方、その他の紫外線遮光性素材では、80〜95%ほどの濃度(5〜20%消失)を維持しており、次亜塩素酸や次亜塩素酸ナトリウムを保存する時には紫外線を遮光することが非常に大切であることが分かります。

時間経過における有効塩素濃度の低下は温度とpHによって大きく変化する

また、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の有効塩素濃度とpHの関係を調べるための実験では、5000ppmあった有効塩素濃度はpHが中性に近い(7〜8)と1ヶ月程度で20%程度まで急激に落ちそのあとは緩やかに減少します。(2次曲線のように減少)

しかし、pH9になると4ヶ月で80%残っており日数1次曲線のグラフに近いです。

一方、pH11になると5ヶ月経っても95%の有効塩素濃度が残っていることからアルカリ性になるほど次亜塩素酸イオンは安定していることが分かります。

また、pHだけでなく温度にも影響を受けることが分かっています。温度を一定に保って保存した場合の有効塩素濃度の実験で、5ヶ月後には5000ppmの濃度の次亜塩素酸ナトリウムは温度が高くなればなるほど有効塩素濃度が低下していました。

40℃→約77%の濃度に低下

25℃→約86%の濃度に低下

5℃ →約95%の濃度に低下

総括すると、次亜塩素酸ナトリウムの保存は低温かつ紫外線の遮光がされており時間とともに有効塩素濃度が下がるため早めに使用することにつきます。

次亜塩素酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの洗浄メカニズム

アルカリ性の水溶液には脂質、タンパク質、糖類など幅広い有機物の汚れに対して溶けて剥がれやすくすることで洗浄力を持っています。

洗浄液はpHが強酸性よりも強アルカリ性の方が除去率は高くpH1とpH14では物質によって除去率が変わってきますが、2〜10倍ほど差があります。

強アルカリ性の水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムは主に水酸化物イオン(OH-)が洗浄成分を主には担っています。

もちろん、濃度と洗浄力は相関関係にあり、濃くなればなるほど洗浄力も大きくなります。

次亜塩素酸ナトリウム水溶液内には次亜塩素酸イオンが存在しており、それも濃度が高まると洗浄効果があり、弱アルカリ領域であれば水酸化ナトリウムよりも洗浄力があることが分かっています。

次亜塩素酸ナトリウムは水酸化物イオンと次亜塩素酸イオン相互の洗浄作用によって水酸化ナトリウムよりも洗浄力が高くなりました。

次亜塩素酸イオンは高い濃度であれば(1000ppm)洗浄効果も見られますが、濃度が低く(100〜200ppm)pH8以下であればあまり洗浄力は見られません。

以上より、次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムを比較すると、弱酸性である次亜塩素酸水溶液に洗浄効果はありませんが、弱アルカリ性以上のpHである程度の濃度がある次亜塩素酸ナトリウムには洗浄力を有しています

次亜塩素酸ナトリウムは適温で加熱をすると洗浄力がアップ

水酸化ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムを用いて、ステンレス鋼に吸着した牛血清アルブミン(BSA)の除去(洗浄力を調べるための試料)を各々の温度で変化があるか実験しました。

600ppm、 pH 9.0 の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaOCL)

600ppm、 pH 9.0 の水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)

洗浄力を高めるためには温度を上げることによって除去スピードは速くなり、20~60℃の間では、10℃上がるごとに約1.4〜1.5倍早まることが分かりました。(閾値があります)

注意点として、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を弱アルカリ領域で温度を上げて使用するとタンパク質変性を促し効果が低下します。温度が70℃を超えてくると脱着速度が低下してきます。

一方、水酸化ナトリウムの場合は、20~60℃の範囲で温度が高くなると多少の除去スピードの変化がりましたが、ほとんど影響はありませんでした。

参考岡山県工業技術センター「次亜塩素酸ナトリウムの洗浄・殺菌効果に及ぼす温度の影響」

次亜塩素酸ナトリウムの洗浄力を上げるために界面活性剤を使用

次亜塩素酸ナトリウムに洗浄力があることが分かりましたが、溶液には表面張力が働くため(水は表面張力が大きい)乳化剤(界面活性剤)の作用と一緒に使うとより効果的です。

乳化剤:互いに混じり合いにくい水と油を、一方の液中に他方を分散させる効果を乳化と呼びます。

注意:漂白剤に闇雲に水溶液を混ぜることは危険ですのでしないでください。

ペットボトルに残留したタンパク質を除去するために次亜塩素酸ナトリウム100ppmに200ppmの乳化剤を入れたものと水酸化ナトリウム100ppm(アルカリ性の代表)のみ入れた2つを比較実験しました。

どちらの溶液もpHがアルカリ性になればなるほど除去率は高まりましたが、乳化剤を入れた溶液で表面張力が弱まり接触面積が増えたため除去率はおよそ倍違っており、pH12でも95%以上除去できるという結果でした。

次亜塩素酸を生成する物質はなに?

次亜塩素酸ナトリウムは一番メジャーですが、それ以外にも無機物、有機物の物質が水に溶けることによって次亜塩素酸(HOCL)を発生させます。

中には、食品添加物として認められており、食品洗浄や食器、器具の消毒、プールや温泉施設の水を消毒するために使われています。

次亜塩素酸を生成する無機物の物質

・次亜塩素酸カルシウム(Ca(OCL)2)

・モノクロラミン(NH2Cl)

・ジクロラミン(NHCl2)

補足:モノは1、ジは2、トリは3を意味しています。

次亜塩素酸を生成する有機物の物質

・塩素化イソシアヌル酸

・有機クロラミン

・トリクロロメラミン

有機物と無機物の違いは簡単に言うと炭素(C)を含むか含まないかです。但し、二酸化炭素、炭素、シアン酸塩なども無機物に分類されます。

塩素系の食品添加物は何がある?

食品添加物として使用される塩素系の殺菌料は以下のものがあります。

・二酸化塩素

・亜塩素酸ナトリウム

・次亜塩素酸カルシウム

・次亜塩素酸ナトリウム

・次亜塩素酸水

・次亜塩素酸水溶液

対象の食品や用途の制限があるので各々の物質で確認が必要です。殺菌料は医薬品の殺菌剤と区別しております。

殺菌料とは、食品の製造、加工、保存するために使用される物質で、食品を水だけでは十分に細菌やウイルスを落とすことができない時に減菌、除去するために使用されます。

次亜塩素酸カルシウムは1959年に殺菌料として認められました。白い個体の物質で安定性が高くプールの殺菌や食品を加工する前に洗浄するために使われています。

他方、次亜塩素酸ナトリウムは戦後すぐに殺菌料と認められ今も同様に使用されています。

有効塩素濃度50~200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液です。基本的には濃度が2倍になれば殺菌時間も半分になると思って結構です。

もちろん、pHや温度使用する対象の物によって変わってきます。

食品現場での注意点として、次亜塩素酸ナトリウムも次亜塩素酸も有機物(汚れ)がたくさんある環境では、殺菌能力がかなり落ちてしまいます。

つまり、嘔吐物の処理で次亜塩素酸ナトリウムを使用するとありますが、直接吹きかけたとしても有機物のあるところでノロウイルスなどのウイルスに効果はほぼありません。

従って、空中にある浮遊菌に注意して適切に嘔吐物(有機物)を処理した後に次亜塩素酸水溶液や次亜塩素酸ナトリウムで徹底的に噴霧すべきです。

乾燥すると埃と一緒にまってしまい、空気感染を起こす可能性があります。ノロウイルスは10〜100個のウイルスを取り込むだけで感染する可能性があると言われています。

参考:厚生労働省大量調理施設衛生管理マニュアル

まとめ

次亜塩素酸は濃度が低くても殺菌力があり安全に使用できる一方で、次亜塩素酸ナトリウムは殺菌力こそ劣りますが、安定性が高く、洗浄力が高く漂白作用もあるため安価に使用できます。但し、子供の誤飲事故や取り扱いに注意が必要です。

次亜塩素酸水も次亜塩素酸ナトリウムも殺菌力は「次亜塩素酸」または、「次亜塩素酸イオン」によるものです。

これら以外にも有機系、無機系の物質によっても発生させることができますが、やはり次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムが使い勝手がいいです。

これらどちらの物質もも紫外線や高い温度によって濃度が低下してしまいます。遮光性のボトルで冷暗所に保存するようにしましょう。

以上、次亜塩素酸と次亜塩素酸ナトリウムとは違う!次亜塩素酸ナトリウムの特徴についてご紹介しました。