厚生労働省がまとめた次亜塩素酸水について安全性から効果まで

厚生労働省が示す次亜塩素酸

【追記2018年5月18日に再度記事の更新を行いました。】

最近話題の除菌剤として次亜塩素酸を使った商品が多く出てきています。

しかし、厚生労働省が定義したものでない製法だったり、原料でも「公認」と記載している商品もあったり、どれが正しい情報なのか分からない方もいらっしゃると思います。

そこで、今回厚生労働省が定義する「次亜塩素酸水」について詳しくご説明できたらと思います。

厚生労働省が定義する次亜塩素酸水とは

次亜塩素酸水は、厚生労働省によって食品添加物の殺菌料として認められており、次亜塩素酸を主成分とする水溶液です。

日本では2002年に食品添加物として指定されています

食品、添加物等の規格基準(1959年12月厚生省告示370号)において、「次亜塩素酸水は、殺菌料として使用され、最終食品の完成前に除去しなければならない」。また、「使用後、食品を飲用適の水で十分水洗する」と使用基準及び成分規格が定められています。

参考:厚生労働省「添加物使用基準リスト」

2002年〜2007年までは、次亜塩素酸水には、強酸性次亜塩素酸水と微酸性次亜塩素酸水の2種類ありました。

しかし、2007年以降、製法の技術革新や最新実験結果を踏まえて、次亜塩素酸水はより細かく3種類に区別して濃度、名称、製法も指定されました。

今までの次亜塩素酸水についての経緯

・2005年1月31日

厚生労働大臣から食品安全委員会委員長あてに添加物の成分規格改正に係る食品健康影響評価について依頼

・2007年1月25日

食品安全委員会より食品健康影響評価が通知

2002年〜2007年までの次亜塩素酸水の定義とは

・強酸性次亜塩素酸水 有効塩素 20~60mg/kg(ppm)、pH2.7以下

製法:0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から抽出して製造します。

※隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたもの

・微酸性次亜塩素酸水 有効塩素 10~30mg/kg(ppm)、pH5〜6.5

製法:2~6%塩酸を無隔膜電解槽内で電解して製造します。

※無隔膜電解槽:隔膜で隔てられていない陽極及び陰極で構成されたもの

2007年以降現行の次亜塩素酸水の定義とは

次亜塩素酸水とは、それぞれの決められた原料(塩酸又は塩化ナトリウム)の水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液のことを呼ぶことになりました。

強酸性次亜塩素酸水 有効塩素 20~60mg/kg(ppm)、pH2.7以下

製法:0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から抽出して製造します。

弱酸性次亜塩素酸水 有効塩素 10~60mg/kg(ppm)pH2.7〜5

製造:適切な濃度の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して製造します。

微酸性次亜塩素酸水 有効塩素 10~80mg/kg(ppm) pH5〜6.5

製法:塩酸及び必要に応じ塩化ナトリウム水溶液を加え適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽内で電解して製造します。

次亜塩素酸水製造機械に関する注意点

・電極は白金、チタン、などの電極部分が溶出しないものであること

・製造機械は長時間の使用に耐えれる使用であり、定期的にメンテナンスを行うこと

・非電解質(塩化ナトリウム、塩酸)は、飲料できる水で希釈したものであること

混合式の次亜塩素酸水溶液について

次亜塩素酸水には電解式と混合式という製法があります。電解式で製造した次亜塩素酸を「次亜塩素酸水」と呼びましたが、混合式で製造した次亜塩素酸は次亜塩素酸水とは呼びません。次亜塩素酸が主成分の水溶液なので、「次亜塩素酸水溶液」と化学名称だとなります。

似ている名前で次亜塩素酸の成分は同じですが、厚生労働省としては違う呼び方をしています

混合式は次亜塩素酸ナトリウムと塩酸、クエン酸、二酸化炭素(pH調整剤として用いられるもの)等で製造した次亜塩素酸水溶液です

※混合式に用いることができ、食品添加物とできる次亜塩素酸水溶液のpH調整剤は3種が明記されていますが、その他のpH調整剤はその都度地域の保健所に確認する必要があります。

二酸化炭素は、もともと食品添加物として指定されており、生食用鮮魚介類等以外の食品で使われていましたが、対象になる食品や使用基準は定められていませんでした。

しかし、食品安全委員会に食品健康影響評価を踏まえた結果、2016年に混合式で生成する次亜塩素酸水溶液としてのpH調整剤として認められました。

注意点として、二酸化炭素の混合式で作られる次亜塩素酸水溶液の使用(次亜塩素酸ナトリウムの使用等に伴い 二酸化炭素をpH 調整剤として使用すること)に対象となるのは、生食用鮮魚介類、生食用かき及び冷凍食品(生食用冷凍鮮魚介類に限定)であり、生食用鮮魚介類等の加工時に二酸化炭素を直接使用することは認められません

参考:厚生労働省「生食用線魚介類等の加工基準(二酸化炭素)添加物等の規格基準の一部を改正する件について」

混合式も食品添加物の殺菌料として認められていますが、工場内で次亜塩素酸を製造したものに限ります。つまり、他の場所で詰め替えて作ったものは食品添加物としては使用できません。

参考:厚生労働省「次亜塩素酸ナトリウムに酸を混和して使用することについて」

参考:厚生労働省「添加物等の規格基準の一部を改正する件について」

次亜塩素酸水を使用するときの注意点

使用する前に有効塩素濃度とpHをチェックすること

・有機物(汚れなど)があると殺菌能力が落ちることが分かっているため水道水等で食品の汚れを洗い流した後次亜塩素酸水を使用すること

・使用した後は水道水等で洗い流すこと

・電解式の場合塩素ガスが発生する可能性があるため換気を十分にすること

・次亜塩素酸水を使用するときには「大量調理施設衛生管理マニュアル」に準じて使用するなど、適切に使うこと

紫外線により有効塩素濃度が低下するため早めに使用すること

参考:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」

弱酸性次亜塩素酸水の殺菌効果について

弱酸性次亜塩素酸水の有効塩素濃度30pmm、pH3に緑膿菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、エンテロバクター、フラボバクテリウム、セレウス、サーキュランス、メガリウムに対しての殺菌効果テストを実施しました。

その結果、緑膿菌、サルモネラ、腸炎ビブリオ、エンテロバクター、フラボバクテリウムについては、作用後30秒でも検出しませんでした。

一方、芽胞を形成しているセレウス、サーキュランス、メガリウムは、殺菌効果はありますが、5分後以降も検出してしまいました。

一方、違う実験結果よりpH3の弱酸性次亜塩素酸水は、微酸性次亜塩素酸比較すると遊離有効塩素の存在比率が同じため、微酸性次亜塩素酸水57ppmの実験結果と同等の結果が得られました。

先ほど5分後以降も検出した芽胞を形成している菌でも、3分程度で殺菌することができます。

つまり、殺菌の効果範囲を広げるにはpHの調節することと濃度をあげる必要があり、適切に使用することで即効性があります。

補足:弱酸性次亜塩素酸水の温度を高めることで殺菌効果が上がることが分かっています。

食品中に弱酸性次亜塩素酸水を使うことに対して

キャベツ、リンゴ、タマゴ、アジ、鶏肉に対して、弱酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度 20 ppm、pH3~5)を使用して約30秒間流水洗浄したところ、90~99 %の殺菌効果がありました。

同様に、混合式の次亜塩素酸水溶液、強酸性次亜塩素酸水、次亜塩素酸ナトリウムについても同等の結果が得られました。

また、残留塩素に関して測定したところ、検出限界値0.5ppm以下(水道水は0.1ppm以上と決められています)でした

ましてや、次亜塩素酸水で洗浄後、飲料水ですすぐため食品に残留することはありません。そのため、安全性に懸念がないと厚生労働省は結論付けています。

次亜塩素酸水を洗浄で使った場合の食品の品質劣化に関して

カットしたキャベツを強酸性次亜塩素酸水、弱酸性次亜塩素酸水pH 3、pH 4.6、水道水の4種類で、5分処理したときの影響を、食品からでるアンモニア性窒素の量にて測定しました。

アンモニア性窒素の量が増えれば増えるほど食品の品質劣化につながります。

結果として、pHが低いほど、アンモニア性窒素は増え水道水との結果に差異が見られましたが、弱酸性次亜塩素酸水pH4.6は水道水とあまり変わらない結果でした。

そのため、pHが低い処理液で長時間処理するとアンモニア性窒素がたくさん出るため品質の劣化につながることが分かりました。

弱酸性領域の次亜塩素酸であれば、殺菌効果もあるためカット面を持つ食材の殺菌に適しています。

※全ての溶液で5分処理しても外観に変化はありませんでした。

次亜塩素酸水の安全性について

公益財団法人食品農医薬品安全性評価センター(安評センター、英語名:Public Interest Incorporated Foundation BioSafety Research Center)は、日本国内で使用されている化学物質の安全性評価をしている国の外郭団体です。

静岡県磐田市にあり、厚生労働省管轄から現在は内閣府の管轄となっています。安評センターでも次亜塩素酸に関わる安全性の試験を数多く行っています。※下記の安全性の試験はその他の団体の結果も含まれます。

1 急性毒性試験→なし

ICRマウス(雌雄各5匹)に微酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度50~80ppm、pH 5.0~5.5)を単回経口投与した結果、雌雄ともに死亡例は認められず、中毒症状を示す動物も認められませんでした。

2 遺伝毒性→なし

ネズミチフス菌と大腸菌を用いた微酸性次亜塩素酸水(有効塩素濃度50~80ppm、pH 5.0~5.5)の復帰突然変異試験(検体に突然変異を引き起こす作用(変異原性)があるかどうか細菌を用いて調べる試験)において、陰性でした。

3 刺激性及び感作性(アレルギー反応の一つ)→なし

雌ニュージーランドホワイトウサギを用いた微酸性次亜塩素酸水の皮膚一次刺激性試験、皮膚累積刺激性試験及び眼刺激試験、並びにハートレイモルモットを用いた感作性試験において、いずれの動物にも異常は認められませんでした。

4 抗原性試験→アレルギー症状なし

モルモットに(雄 17 匹)に強酸性次亜塩素酸水(pH 2.42、有効塩素濃度 51ppm)0.25 mL を腹腔内投与し、最終感作24日後、0.5 mLを静脈内投与して抗原性試験が実施されました。その結果、アレルギー症状は確認でませんでした。

5  反復浸漬経皮毒性試験→影響なし

ラットに強酸性次亜塩素酸水(pH 2.42~2.51、有効塩素濃度 45~52ppm)を浸漬投与し、反復浸漬経皮毒性試験が実施されました。その結果、浸漬による皮膚への影響は認められませんでした。

次亜塩素酸水のまとめ

・厚生労働省が食品添加物として使用できる次亜塩素酸水は3種類と定義しており電気分解の製造原料、電解方式まで細かく決められていること

・混合式によって製造された次亜塩素酸水溶液は食品工場内で製造された時のみ食品添加物となり、製造原料も細かく決められていること

微生物に対しての殺菌作用が有効であること

・食品中で次亜塩素酸水を使用しても食品の劣化はpHが中性に近ければ水道水で洗浄したレベルであること

・次亜塩素酸水の安全性の試験はいくつも実施されてパスしていること

以上、厚生労働省がまとめた次亜塩素酸水について安全性から効果までをご紹介致しました。

厚生労働省参考資料:

1 http://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_ziaensosan181214.pdf

2 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0320-7h.pdf

3 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf

4 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8m.pdf