毎年問題となる食中毒や病院内での感染についてニュースでの報道をよく目にすると思います
特にインフルエンザウイルスは空間に漂い空気感染するため同じ病室で2次感染を引き起こします。そこで、対策として空間での除菌・ウイルス分解するために効率よく空間噴霧する除菌剤について研究されています。
以前、韓国で洗剤を加湿器に混ぜて使用し、死者1000人以上出した事件がありました。
その成分は、日本では農薬として使用されている物質で、加湿器を使って撒き散らして吸い込んでいたといういたたまれない惨事が起こりました。
そのため、空間噴霧するにあたって必要な条件として、
・人体に対して安全であるか
・幅広い微生物に効果があるか
・耐性菌を作らないものか
・人がいる環境で簡単に使用でき効果があるか
・ある程度広範囲で使用でき費用対効果があるか
・空間噴霧により表面が濡れないこと
などかなり厳しい条件を作らなければいけません。空間で使用されているものでは、オゾン殺菌、ホルマリン、過酸化水素水、次亜塩素酸ナトリウムなどの薬剤で噴霧をされていました。また、紫外線の照射やフィルターろ過なども用いられていました。
しかし、人体への安全性の問題、残留性、腐食性、効果が薄い、臭気など様々な短所が露呈して人が出入りする現場への応用は難しいため使用の方法は限定的です。
次亜塩素酸水溶液を超音波加湿器に入れて使用する
他方、それらの条件をクリア次亜塩素酸水溶液の空間噴霧が注目されており様々な実験が行われています。
弱酸性の次亜塩素酸水溶液を超音波加湿器に入れ細かいミスト上にすることで殺菌成分を保持したままウイルスの分解や細菌の除菌することが分かりました。
超音波加湿器の良いところは、機械にもよりますが、ミストの霧が1~10マイクロメートル(1000um=1mm)ととても細かいため空間に浮遊することができ、物体に付着しても濡れません。(近くに置いてたくさん噴霧されると水滴化します)
そのため、加湿器の近くに家電製品や水分に弱い物を置かなければ問題なく使用することができます。
空間噴霧実験した結果、一般生菌の落下菌数の減少が認められ、次亜塩素酸水溶液の噴霧により、落下菌数を低く抑えることができることが分かりました。
次亜塩素酸水を加湿器で使うことで空間消臭できる
近年、食品加工場からの排気のにおいに対して周辺住民から苦情が寄せられることが増加しています。この場合問題となるのは悪臭物質だけでなく食品自体のにおいや様々なにおいの複合臭である場合も多いです。
弱酸性次亜塩素酸水溶液の消臭作用により、空間噴霧することによりにおい成分も分解するため、悪臭の問題の軽減につながります。空間噴霧を継続することで、消臭と空間浮遊菌の対策ができます。食品工場だけでなく、ゴミ処理場などでも導入されています。
大腸菌に対する次亜塩素酸空間噴霧の効果は?
弱酸性次亜塩素酸水の濃度20、50、80、200ppm(pH6)を空間噴霧して、20ppmの低濃度でも大腸菌であれば、2分以上噴霧することで検出なしという結果がでました。
殺菌するためには次亜塩素酸水溶液の濃度と時間に比例して減少します。シャーレ内での実験ではなく、ミスト状でも同様に殺菌効果があることが分かりました。
一方で、空間に浮遊している菌やウイルスに対しては効果がありますが、有機物に混じった中で微生物が存在している場合にはない場合と比べて濃度と時間が十分に必要なため、次亜塩素酸水溶液を使用する時には清掃した後に使うことが効果的です。
ノロウイルスに対する次亜塩素酸空間噴霧の効果は?
Park, G. W., Boston氏、D. M., Kase氏, J. A., Sampson氏, M.N氏、Sobsey, M. D氏の研究チームは次亜塩素酸(HCLO)による不活化を、ヒトノロウイルスおよび代替ウイルスとしてMS2ファージ、マウスノロウイルスを用いて実験しました。
3種類のウイルスは20~200ppm の次亜塩素酸水溶液の10分間(以下)の作用で、感染価およびウイルスコピー数は少なくても1000分の1に減少しました(ヒトノロウイルスは遺伝子検出のみ)。
一方、水溶液中では20秒の作用で、3種類の感染価および遺伝子検出は、少なくても1000分の1に減少しました。
また、閉ざされた室内に超音波噴霧器を使用し、ミスト状に噴霧した実験では、1%糞便を含む3種のウイルス混合液を付着させて、乾燥させたセラミックタイルを水平方向、垂直方向に設置し、180~200ppmの遊離塩素を1時間噴霧させました。
その結果、感染価では5000分の1以上、遺伝子検出では概ね10万分の1以上の低下が観察され、有用性が確認されたと報告しています。
引用:Applied and Environmental Microbiology., 73,4463-4468(2007)
インフルエンザに対する次亜塩素酸空間噴霧の効果は?
大腸菌の試験と同様に、次亜塩素酸水溶液50、80、200、500ppmを弱酸性(pH6)と弱アルカリ性(pH10)に調整した水溶液を超音波加湿器にて噴霧したところ10分程度(どの濃度、どのpHでも)で検出なしという結果でした。
また、次亜塩素酸水溶液50ppmを弱酸性と弱アルカリ性に調整した溶液の中に浮遊させたインフルエンザウイルスを投入した結果、弱酸性では10秒以内に分解でき、弱アルカリ性では30秒で分解することができました。
補足:次亜塩素酸水溶液の特徴として殺菌力が最大となるのは弱酸性領域の時のため実験の結果が異なります。
次亜塩素酸水は有機物に触れることで失活するため残留性しない
次亜塩素酸水(pH 2.67、有効塩素濃度 24.1ppm)を直射日光の当たる屋外で放置し、空気との接触面積と消失にかかる時間について食品安全委員会農薬専門調査会が提供しているデータです。
このデータから分かることは、空気との接触面積が大きければ大きいほど、次亜塩素酸水が早く失活します。つまり、農作物に次亜塩素酸水を散布した場合より短い時間で効果がなくなります。効果がなくなると水道水(レベル)に戻ると思って問題ありません。
引用:食品安全委員会農薬専門調査会「特定農薬評価書次亜塩素酸水」
弱酸性次亜塩素酸を空間噴霧することの安全性試験
有効塩素濃度200ppmの弱酸性次亜塩素酸水溶液の安全性も次亜塩素酸水同様に安全性試験をクリアしております。
またラットに対する空間噴霧吸引暴露試験の安全性も確認されており、その結果として弱酸性次亜塩素酸水溶液を吸入したことにより体重。血液性状、肺などの組織への悪影響も認められませんでした。
そのため、弱酸性次亜塩素酸水溶液を空間中に霧化させて空間噴霧し、浮遊菌やウイルス対策として利用することが可能です。
以上、次亜塩素酸水を超音波加湿器に入れて空間除菌へ応用。その効果についてご紹介しました。