お子さんの健康は、ご家族にとって何よりも大切なことですよね。目に見えないウイルスや菌との戦いは、日々の生活の中で避けては通れないテーマです。テレビやインターネットでは、新しい感染症の情報が飛び交うこともあり、「一体、何に気をつければいいの?」と不安になることもあるかもしれません。
今回は、かつて人類を大いに苦しめ、多くの命を奪ったけれど、今では「過去の感染症」となった天然痘ウイルスのお話を通して、私たちがどのようにウイルスと向き合ってきたのか、そしてこれからもどのように共生していくべきなのかをお伝えいたします。
かつて人類を脅かした「巨大ウイルス」天然痘
天然痘ウイルスは、その名の通り少し「巨大」なウイルスで、かつては世界中で多くの命を奪ってきました。その姿は卵型で、通常のウイルスよりもかなり大きいことが特徴です。
もし今、天然痘が流行したら…本当に恐ろしいことですよね。感染すると、まず高熱が出て、その後、顔を中心に全身に豆粒のような発疹が広がり、最終的には膿を持つ水ぶくれになります。
重症化すると、内臓からの出血や呼吸困難を引き起こし、発病からわずか1週間ほどで命を落とす可能性もある、非常に危険で恐ろしい感染症でした。
しかし、この天然痘は1980年にWHO(世界保健機関)によって世界中で撲滅が宣言され、今ではワクチン接種の必要もなくなりました。
これは、人類が力を合わせてウイルスに打ち勝った、まさに素晴らしい歴史的快挙なんです!私たちが生活する現代社会では、もう心配する必要のない病気ですので、どうぞご安心ください。

他の恐ろしいウイルスも天然痘のように撲滅できるといいですよね!
このウイルスは、現在、安全管理が徹底されたごく一部の研究機関でのみ、厳重に保管されています。天然痘の撲滅は、人類が未来の感染症とどう向き合うべきかを示す、希望の光とも言えるでしょう。
天然痘の撲滅には、「ワクチン」が非常に大きな役割を果たしました。その歴史は、今から200年以上も前に遡ります。科学の力と、人々の生活の中でのささやかな気づき、そして世界規模での協力体制が、いかに感染症を克服する上で重要であったかを教えてくれます。
18世紀後半のイギリスでは、天然痘が猛威を振るい、多くの人々が苦しんでいました。そんな中、エドワード・ジェンナーというお医者さんが、ある不思議なことに気づきます。
それは、当時、天然痘が流行する中で、牛の乳搾りをする酪農の女性たちが、牛からうつる牛痘(ぎゅうとう)という、天然痘に似た軽い症状の病気にかかると、なぜか重い天然痘にはかかりにくい、ということでした。牛痘は、腕などに軽い発疹ができる程度で、命に関わるような病気ではありませんでした。
ジェンナーさんはこの現象に注目し、1796年に、牛痘にかかった人の膿を健康な少年に接種するという、当時としては画期的な実験を行いました。すると、その少年は牛痘にかかった後、天然痘ウイルスを接種しても重い症状が出ず、天然痘にかかることがなかったのです!この発見は、まさに「奇跡の発見」と言えるでしょう。
これが、世界で初めての「天然痘ワクチン」の開発へと繋がり、多くの命が救われることになりました。
「ワクチン」という言葉の語源も、ラテン語で「牛」を意味する「vacca(ヴァッカ)」から来ていると言われています。その後、ワクチンの改良が重ねられ、WHOが主導する世界規模での大規模な予防接種キャンペーンが行われたことで、ついに天然痘は地球上から姿を消したのです。
この成功は、その後のポリオなど、他の感染症対策にも大きな影響を与え、現代の予防接種の基礎を築きました。
なぜ人類は、昔よりも感染症にかかりやすくなったの?
天然痘の撲滅は喜ばしいことですが、実は昔(狩猟時代)に比べると、現代の方がさまざまな感染症にかかりやすい環境にあると言われています。私たちの生活が豊かになり、社会が発展するにつれて、ウイルスや細菌との新たな関係が生まれてきたのです。
狩猟時代の人々は、食料を求めて移動しながら暮らしていました。そのため、一つの集団の人数は少なく、感染症が広まる機会も限られていたと考えられています。
重い病気にかかった人は、集団から離れていくこともあり、感染拡大のリスクが低かったとも言われています。集団の規模が小さく、常に移動していたため、病原体が長期間とどまることが難しかったのですね。
しかし、農業が始まり、人々が一ヶ所に定住し、食料の確保が容易になると、人口が爆発的に増加しました。 人々が密集して暮らすようになると、状況は一変します。
- 排泄物との接触が増える: 定住生活では、排泄物の処理が追いつかず、衛生状態が悪化することがありました。糞便などと触れる機会が増えることで、そこから寄生虫や細菌などの感染症が広まりやすくなったのです。
- 動物との距離が近くなる: 農業で得た作物を貯蔵するようになると、それを狙ってネズミや小動物が集まるようになりました。これらの動物が持っている病原菌(ライム病、ペスト、野兎病など)が人の社会に持ち込まれ、感染症の発生に繋がりました。
- 家畜からの感染: 牛、豚、鶏、羊、ヤギなどの家畜を飼い始めるようになったことも、新たな感染症が人にうつる大きなきっかけとなりました。実は、私たちが今も悩まされている多くの感染症は、家畜由来だと言われています。例えば、牛からは天然痘が、アヒルからはインフルエンザが、豚や犬からは百日咳が人へと感染したと考えられています。これらの動物にとっては無害なウイルスや細菌でも、人間に感染すると病気を引き起こすことがあるのです。
このように、私たちの生活スタイルが変化し、動物との距離が近くなったことで、ウイルスや菌も新しい環境(私たち人間)に適応し、さまざまな感染症が生まれたのです。
ウイルスは、私たち人間にどうやって適応していくの?
ウイルスが人間に感染し、さらに人から人へと広がるようになるまでには、いくつかの段階があると考えられています。これは、ウイルスが私たちという新しい「宿主(しゅくしゅ)」に適応していくプロセスとも言えますね。
科学的には明確に区切られているわけではありませんが、その特徴を理解するために、大きく5つのステージに分けて考えることができます。
- 第1ステージ(適応準備ステージ): この段階では、感染症は家畜や野生動物から、引っかき傷や噛み傷などを通じて人に直接感染します。しかし、まだ人から人へは感染が広がりません。例えば、一部のレプトスピラ症や猫ひっかき病などがこれにあたります。
- 第2ステージ(適応初期ステージ): 人から人への感染が起こるようになりますが、まだ感染率は低く、流行は自然に収束していくことが多いです。過去のSARS(重症急性呼吸器症候群)やカリニ肺炎の一部などがこの段階にあたると考えられます。
- 第3ステージ(適応後期ステージ): ウイルスが人への適応をさらに進め、定期的に感染を引き起こすようになります。エボラ出血熱やライム病などがこのステージの例として挙げられます。この段階では、まだ動物からの感染も起こりえます。
- 第4ステージ(適応ステージ): この段階になると、ウイルスは人間に完全に適応し、人だけで存在できる感染症となります。天然痘やHIV(エイズの原因ウイルス)、麻疹(はしか)などがこれにあたります。これらのウイルスは、人間がいなければ生き残ることができない、まさに「人間のウイルス」と言えるでしょう。
- 第5ステージ(過度適応ステージ): 人間に適応しすぎたために、人の生活様式や環境の変化にウイルスが適応できなくなり、次第にウイルスが消えていく段階です。例えば、成人T細胞白血病ウイルスの一部などが、この可能性を示唆しています。これは、ウイルスが人間という環境に過度に適応した結果、特定の条件下でしか生き残れなくなるためと考えられています。
これらのステージからわかるように、新たに出現する感染症もあれば、社会から消えていく感染症もあり、ウイルスと私たちの関係は時代によって常に変化し続けています。
病原体からすると、感染者が元気で動き回り、他の人に感染を広げてもらう方が、子孫を増やし、生き残るために有利です。インフルエンザや風邪のように飛沫感染する可能性があるものは、症状が軽ければ感染者も普段通り活動しやすいため、ウイルスが広がりやすくなります。
従って、長い期間で見ると、インフルエンザウイルスなども症状が軽くなっていく可能性があると言われています。
一方で、短期的に見ると、流行が爆発的に起きるような環境であれば、強毒性で重症化を引き起こす可能性も示唆されています。感染力の強いウイルスほど、その傾向があるかもしれません。
しかし、非常に毒性が強く、感染するとすぐに宿主を殺してしまうようなウイルスは、自分自身も宿主とともに消滅してしまうことになります。
例えるなら、自分の住み家を自分で壊してしまうようなものです。そのため、長い期間を経て、ウイルスは宿主と共存関係を築くために、潜伏期間を長くして感染効率を高め、致死性を下げるような、弱毒性のウイルスに変化していくと考えられています。
もしかしたら、将来的に、私たちとウイルスがより良い形で「共生」できる日が来るかもしれません。今私たちを悩ませるウイルスも、いつか私たちを守る存在になる可能性だってあるのです。
病原体との戦いを大きく変えた「抗生物質」の発見
感染症との戦いにおいて、ワクチンの開発と並んで、人類の歴史を大きく変えたのが「抗生物質」の発見です。特に、最初の抗生物質であるペニシリンの登場は、細菌感染症の治療に革命をもたらし、多くの命を救いました。
1929年、イギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミング氏は、研究室で実験中に、偶然あることに気づきました。
それは、培養皿に生えた青カビ(アオカビ)が、隣に培養していたブドウ球菌という細菌の増殖を阻害している、という現象でした。培養皿の中には、青カビの周りにだけ、ブドウ球菌が繁殖できない透明な領域があったのです。
フレミング氏はこの現象から、青カビが何らかの抗菌作用を持つ物質を産生していると考え、その物質を「ペニシリン」と名付け、その発見を論文として発表しました。
しかし、その時点ではまだ、ペニシリンを薬として使える形にすることはできませんでした。
その後、1940年代に入り、エルンスト・ボリス・チェーン氏(ドイツ)とハワード・フローリー氏(オーストラリア)によって、ペニシリンの治療効果と化学組成が詳細に明らかにされ、ついに抗生物質として大量生産できるようになりました。
ペニシリンは、第二次世界大戦中に多くの負傷兵に使用され、その効果は絶大でした。それまでの戦争では、銃で負った傷よりも、その傷口から感染する細菌感染症によって命を落とす兵士の方が多かったのですが、ペニシリンが使われるようになってからは、感染症による死者数が銃弾による死者数を下回る、という歴史上初めての出来事を実現しました。
これまでなら感染症で命を落としていた人々が、ペニシリンによって救われたのです。
このペニシリンの開発を皮切りに、さまざまな感染症に効く抗生物質の研究が進められ、細菌による多くの病気(例えば、肺炎や結核、破傷風など)が治療できるようになりました。また、細菌だけでなく、ウイルスに対する「抗ウイルス薬」の研究も、現在まで進化し続けています。
抗生物質は、細菌感染症に対する強力な武器として、私たちの健康を守る上で今も欠かせない存在となっていますが、使いすぎによる耐性菌の問題も浮上しており、その適切な使用が求められています。
天然痘の撲滅は、人類が協力し、科学の力でウイルスに立ち向かった素晴らしい例です。そして、ペニシリンなどの抗生物質の発見もまた、細菌感染症との戦いにおける大きな進歩でした。これらの歴史から、私たちは病原体との戦い方だけでなく、彼らとの「共生」という視点も学ぶことができます。
現代社会では、多様な感染症が存在しますが、私たちは日々の生活の中でできる対策をしっかり行うことで、ご家族の健康を守ることができます。例えば、基本的な手洗いやうがい、適切な換気はもちろん、キエルキンのような安心できる除菌・消臭剤を上手に活用して、お家の中を清潔に保つことも、ご家族みんなの安心に繋がる大切な一歩です。
以上、天然痘が過去の病気に?ウイルスと人類の歴史から学ぶ「共生」の道についてお話をしました。
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