保育園の感染症対策|季節別のポイントと発生時の対応を解説

保育園の感染症対策ガイド|季節別の予防法と発生時の対応を解説

「保育園に入ったら風邪ばかりひくようになった」「園で感染症が流行していると聞いて不安」――そんな声は、保護者の方からも保育士の方からも多く寄せられます。乳幼児が集団で過ごす保育園では、感染症が広がりやすい環境にあるのは事実です。しかし、正しい知識と日々の対策を徹底することで、感染リスクを大幅に減らすことができます。

この記事では、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2021年一部改訂)」をはじめとする公的機関の情報に基づき、保育園で流行しやすい感染症の種類から、日常の衛生対策、除菌・清拭に使う液剤の使い分け、発生時の対応フローまでを網羅的に解説します。新任の保育士さんから園長先生、そして入園を控える保護者の方まで、それぞれの立場で役立つ情報をまとめました。

※薬機法の観点から、医薬品・医薬部外品ではない家庭・施設での衛生対策は厳密には「除菌」にあたります。本記事では検索性に配慮して一般用語の「消毒」「予防」も併用していますが、製品紹介箇所では「除菌」表記を基本としています。

目次 非表示

  1. 保育園で感染症が広がりやすい3つの理由
  2. 流行しやすい感染症と季節別カレンダー
  3. 日常で実践すべき感染症対策の基本5項目
  4. 除菌・清拭に使う液剤の選び方と使い分け
  5. 嘔吐物・排泄物の安全な処理手順
  6. 感染症発生時の対応フロー
  7. 保護者との連携で感染拡大を防ぐ
  8. 厚生労働省ガイドラインのポイント
  9. 保育園で導入したい最新の衛生管理ツール
  10. 保育園の感染症対策でよくある質問(FAQ)
  11. まとめ:日常の習慣化が園と子どもを支える基本

保育園で感染症が広がりやすい3つの理由

保育園で感染症が流行しやすいのには、科学的な根拠があります。まずはその理由を理解することが、効果的な対策の第一歩です。

乳幼児は免疫が未発達で感染リスクが高い

生まれたばかりの赤ちゃんは、母親から受け継いだ抗体(移行抗体)によってある程度守られています。しかし、この移行抗体は生後6か月ごろまでに徐々に減少し、それ以降は自分自身の免疫系で感染症と戦う必要があります。

乳幼児の免疫系はまだ発達途上にあるため、大人なら軽症で済むような病原体にも強く反応してしまうことがあります。つまり、大人が感染しても症状が出ないウイルスでも、乳幼児にとっては高熱や嘔吐といった重い症状につながる可能性があるのです。これが、保育園で感染症が重症化しやすい大きな要因のひとつです。

密集・密接な集団生活が感染経路を増やす

保育園は、限られたスペースの中で多くの子どもたちが一緒に遊び、食事をし、お昼寝をする場所です。このような密集した環境では、飛沫感染(咳やくしゃみによる感染)や接触感染(手や物を介した感染)の機会が格段に増えます

たとえば、ひとりの園児がノロウイルスに感染した場合、同じおもちゃを触った別の園児、隣で給食を食べていた園児、おむつ交換を担当した保育士――このように、ひとつの感染から短時間で複数の感染経路が生まれます国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構/JIHS)の感染症サーベイランスでも、保育施設での集団感染事例は毎年一定数報告されています。

自分で衛生管理ができない年齢層が中心

0歳から2歳くらいの乳幼児は、口に手を入れたり、床に落ちたおもちゃをなめたりすることが日常的です。また、鼻水が出ても自分では拭けず、咳をするときに口を覆うこともできません。こうした行動は発達段階として自然なものですが、感染症の拡大という観点では大きなリスク要因になります。

だからこそ、子どもたち自身に衛生管理を任せるのではなく、保育士や保護者など大人の側が環境を整えることが重要です。日常的な消毒や換気、健康観察といった「環境側の対策」が、保育園の感染症予防において欠かせないのです。

流行しやすい感染症と季節別カレンダー

保育園では、季節によって流行しやすい感染症が異なります。年間を通じた感染症の流行傾向を把握しておくことで、今の時期に何を警戒すべきか」が明確になり、先手を打った対策が可能になります。以下に、季節ごとの代表的な感染症をまとめました。

季節(月)主な感染症特徴
冬(12〜2月)インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス飛沫・接触・経口感染。嘔吐下痢が多い
春(3〜5月)溶連菌感染症、感染性胃腸炎飛沫感染が中心。喉の痛みや発疹
夏(6〜8月)手足口病、プール熱、ヘルパンギーナエンテロウイルス・アデノウイルスが原因
秋(9〜11月)RSウイルス感染症、マイコプラズマ肺炎乳児で重症化リスクあり。咳が長引く

冬(12〜2月):インフルエンザ・ノロウイルス・ロタウイルス

冬は、保育園でもっとも感染症が流行しやすい時期です。インフルエンザは飛沫感染と接触感染で広がり、38度以上の高熱や全身の倦怠感が特徴です。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の感染症発生動向調査でも、毎年12月から翌年3月にかけてが流行のピークとなっています。

ノロウイルスとロタウイルスは、いずれも急性胃腸炎の原因となるウイルスです。激しい嘔吐と下痢が主な症状で、特にノロウイルスはわずか10〜100個程度のウイルス粒子で感染が成立するほど感染力が強いとされています。嘔吐物や排泄物を介して爆発的に広がるため、保育園での集団感染が毎年報告されています。

春(3〜5月):溶連菌感染症・感染性胃腸炎

春先に増えるのが溶連菌感染症です。A群溶血性レンサ球菌が原因で、強い喉の痛みや38〜39度の発熱、舌が赤くなる「いちご舌」が特徴的な症状です。飛沫感染で広がるため、園内でひとり発症すると周囲に広がりやすい傾向があります。適切な抗菌薬治療が必要なため、疑わしい場合は早めの受診が重要です。

また、冬から春にかけては感染性胃腸炎がだらだらと続くこともあります。年度替わりの時期は、新入園児が増えることで新たな感染経路が加わりやすいため、引き続き注意が必要です。

夏(6〜8月):手足口病・プール熱・ヘルパンギーナ

夏は、エンテロウイルスやアデノウイルスが原因となる感染症が増えます。手足口病は、手のひら・足の裏・口の中に水疱性の発疹ができるのが特徴で、毎年6月から8月にかけて流行のピークを迎えます。国立健康危機管理研究機構(JIHS/旧国立感染症研究所)の公開データによると、患者の約90%が5歳以下の乳幼児です。

プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスが原因で、高熱・喉の痛み・結膜炎の3つが主な症状です。プールの水を介して感染することがあるため「プール熱」と呼ばれますが、飛沫や接触でもうつります。ヘルパンギーナは急な高熱と口腔内の水疱が特徴で、食事がしづらくなるため脱水に注意が必要です。

秋(9〜11月):RSウイルス感染症・マイコプラズマ肺炎

近年、RSウイルスの流行時期が従来の冬季から秋へと前倒しになる傾向が報告されています。RSウイルスは、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するとされる非常にありふれたウイルスですが、生後6か月未満の乳児や早産児では、細気管支炎や肺炎に進行して重症化するリスクがあります。なお、2026年度からは妊婦へのRSウイルスワクチンが定期接種の対象となり、出生直後の乳児の重症化予防が期待されています。

マイコプラズマ肺炎は、「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌が原因で起こる呼吸器感染症です。長引く乾いた咳が特徴で、数週間にわたって咳が続くことがあります。飛沫感染で広がり、園内で複数の園児が同時期に発症するケースも見られます。

日常で実践すべき感染症対策の基本5項目

感染症対策は、特別なことではなく日常の習慣の積み重ねが基本です。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」でも、日々の衛生管理の徹底が強調されています。ここでは、保育園で実践すべき5つの基本項目を紹介します。

正しい手洗い・うがいの指導方法

手洗いは、感染症予防の中でもっとも基本的かつ効果的な対策です。厚生労働省のガイドラインでは、流水と石けんによる30秒以上の手洗いが推奨されています。保育の現場では、登園時、食事の前後、排泄の後、外遊びの後など、1日のなかで複数回の手洗いを習慣づけることが大切です。

小さな子どもに手洗いの大切さを伝えるには、「手洗いの歌」に合わせて手のひら・手の甲・指の間・爪の先・手首を順番に洗う方法が効果的です。視覚的な手洗いポスターを手洗い場に掲示しておくと、子どもたちが自然に正しい手順を覚えやすくなります。

うがいについては、3歳以上の園児を目安に練習を始めるとよいでしょう。それより小さい年齢では水を飲み込んでしまう可能性があるため、まずは「ブクブクうがい」から始め、慣れてきたら「ガラガラうがい」に進む段階的な指導が適しています。

おもちゃ・机・ドアノブのこまめな消毒

接触感染を防ぐためには、園児が触れる頻度の高い場所やモノの消毒が欠かせません。具体的には、おもちゃ、机やテーブル、ドアノブ、手すり、蛇口レバー、トイレの便座やフラッシュボタンなどが対象です。

消毒の頻度は、通常時であれば1日1〜2回が目安ですが、感染症の流行時にはさらに回数を増やすことが望ましいとされています。おもちゃについては、口に入れやすい乳児クラスのものは毎日消毒し、使用後は別の容器に分けて管理する方法が有効です。

除菌・清拭に使う液剤は、対象となる病原体や使用する場所に応じて使い分ける必要があります(詳しくは後述の「除菌・清拭に使う液剤の選び方と使い分け」で解説します)。

換気と湿度管理で空気中のウイルスを減らす

飛沫感染や空気感染(飛沫核感染)を防ぐには、室内の換気が重要です。厚生労働省では、保育室の換気について1時間に2回以上、1回あたり数分間の換気」を推奨しています。対角線上にある窓やドアを同時に開けることで、効率的な空気の入れ替えができます。

また、冬場は室内が乾燥しやすく、インフルエンザウイルスなどは湿度が40%以下になると空気中での生存時間が長くなることが研究で明らかになっています。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、保育室環境のめやすとして湿度60%程度が示されており、一般的にはおおむね50〜60%を目安に湿度管理を行うのが望ましいとされています。加湿器の活用や、濡れタオルを室内に干すなどの方法で湿度管理を行いましょう。

登園時の健康観察と体調チェックの徹底

感染症の拡大を食い止めるうえで、「早期発見・早期対応」は非常に重要です。毎朝の登園時に園児一人ひとりの体調を確認する「健康観察」を徹底しましょう。

具体的には、登園時に以下のポイントをチェックします。体温が37.5度以上の発熱がないか。咳・鼻水・喉の痛みなどの呼吸器症状がないか。嘔吐や下痢の症状が前日の夜からなかったか。発疹や目の充血がないか。これらの項目を保護者からの聞き取りと視診で確認し、異常があれば別室で様子を見るか、保護者に連絡して早めの受診を促します。

保護者にも、家庭での検温や体調の変化を連絡帳やアプリで共有してもらう仕組みを整えておくと、園と家庭の双方向で健康管理が行き届きます。

職員の健康管理と感染症研修の実施

感染症対策は園児だけでなく、職員の健康管理も不可欠です。保育士自身がウイルスを持ち込んでしまうケースもあるため、出勤前の検温や体調チェックを習慣づけましょう。体調不良時の出勤基準を明確にし、「無理をして出勤しない」文化を園全体で共有することが大切です。

また、年に1回以上の感染症研修を実施することで、最新の感染症情報や正しい消毒手順を職員全体に周知できます。特に嘔吐物の処理手順は、頭では理解していても実際の場面で正しく行えないケースが少なくありません。定期的な実技研修を取り入れることで、いざという時に迅速かつ安全に対応できる体制が整います。

除菌・清拭に使う液剤の選び方と使い分け

保育園での日常的な衛生管理に使われる液剤には、医薬品・医薬部外品の「消毒剤」と、雑貨に分類される次亜塩素酸水のような液剤があります。それぞれ法令上の位置づけや特徴が異なり、対象となる病原体や使用場面に合わせて使い分けることが大切です。ここでは、保育現場で代表的な3種類の特徴を整理します。

種類ノロウイルスインフルエンザ安全性保育園での使いやすさ
アルコール消毒液効果が限定的有効引火性あり物品表面の拭き取りに便利
次亜塩素酸ナトリウム有効有効皮膚刺激・金属腐食あり環境消毒向き
次亜塩素酸水有効有効素材を傷めにくく取り扱いやすい幅広い用途で活用可

アルコール消毒が効くもの・効かないもの

アルコール消毒液(エタノール濃度70〜80%程度)は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのような「エンベロープウイルス」に対して効果を発揮します。エンベロープウイルスは脂質の膜(エンベロープ)で覆われており、アルコールがこの膜を破壊することで感染力を失わせます。

しかし、ノロウイルスやロタウイルスのような「ノンエンベロープウイルス」には、アルコールの効果は限定的です。これらのウイルスは脂質の膜を持たないため、アルコールで膜を破壊するという作用が及ばないのです。そのため、「アルコールで拭いたから大丈夫」と考えるのは危険であり、ノロウイルスの流行期には別の消毒剤を併用する必要があります。

次亜塩素酸ナトリウムの用途と注意点

次亜塩素酸ナトリウムは、家庭用の塩素系漂白剤(ハイターなど)の主成分として知られる消毒剤です。ノロウイルスやロタウイルスを含む幅広い病原体に対して有効であり、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」でも嘔吐物処理時の消毒剤として推奨されています。

一方で、使用にあたっては注意が必要です。次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で、皮膚に触れると刺激があり、金属を腐食させる性質があります。また、独特の塩素臭が強く、換気が不十分な場所で使用すると不快感や体調不良の原因になることもあります。使用時にはゴム手袋の着用と十分な換気が必須です。希釈濃度の管理も重要で、嘔吐物処理時は0.1%(1,000ppm)、環境消毒には0.02%(200ppm)が一般的な目安です。

次亜塩素酸水の特長と保育現場での活用法

「次亜塩素酸水」は、塩酸や食塩水を電気分解して生成される酸性の水溶液です。次亜塩素酸ナトリウムと名前は似ていますが、化学的な性質はまったく異なります。次亜塩素酸水は弱酸性(pH5.0〜6.5)で、後述のNITE検証など公的試験において、適切な有効塩素濃度の条件下で対象物表面の幅広い病原体に対する有効性が報告されています。

製品評価技術基盤機構(NITE)「新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について最終報告」(2020年6月)では、汚れ(有機物)をあらかじめ除去したうえで対象物に対して十分な量を使用した試験条件下で、有効塩素濃度35ppm以上の次亜塩素酸水(電解型・非電解型とも)が新型コロナウイルスに対する有効性を示すことが確認されました。これは試験条件下での成分単体に関する評価であり、製品全体の効果や実生活すべての場面での効果を保証するものではなく、すべての菌・ウイルスに効果があるわけではありません。次亜塩素酸水は有機物と反応した後に水に戻る性質を持つため、対象物表面の清拭用途として活用されている液剤のひとつです。

保育園での活用場面としては、おもちゃの除菌(スプレーして拭き取るか、浸け置き洗い)、テーブルや手すりの日常的な拭き掃除、嘔吐物処理後の仕上げ除菌などが挙げられます。アルコールのような引火性がなく、次亜塩素酸ナトリウムのような強い刺激臭や金属腐食のリスクも低いため、保育現場でのさまざまな場面に適しています。

なお、市販の次亜塩素酸水製品の多くは使用前に水で希釈する必要がありますが、キエルキンは希釈不要でそのまま使用できる仕様になっています。スプレーボトルに入れておけば、おもちゃの除菌・テーブル拭き・手すりの清拭などをワンアクションで実施でき、忙しい保育現場でも導入のハードルが低い点が特長です。希釈作業に伴う濃度ミスやコンタミネーションのリスクが避けられるため、職員によって除菌効果にばらつきが出にくいというメリットもあります。

嘔吐物・排泄物の安全な処理手順

ノロウイルスやロタウイルスの流行期には、園内で園児が突然嘔吐するケースが起こり得ます。嘔吐物には大量のウイルスが含まれており、処理を誤ると二次感染の大きな原因となります。正しい処理手順を職員全員が把握しておくことが重要です。

必要な装備と処理の流れ

嘔吐物の処理には、あらかじめ「嘔吐処理キット」を準備しておくと迅速に対応できます。キットに含めるべきものは以下の通りです。使い捨て手袋(2枚重ね推奨)、使い捨てエプロンまたはガウン、マスク、ペーパータオルまたは新聞紙、消毒液(次亜塩素酸ナトリウム0.1%または次亜塩素酸水)、ビニール袋(密閉用)です。

処理の流れは以下の手順で行います。

  1. まず、周囲の園児をその場から離し、窓を開けて換気を行います。
  2. 処理者は使い捨て手袋を2枚重ねで着用し、マスクとエプロンを装着します。
  3. 嘔吐物をペーパータオルや新聞紙で外側から内側に向かって静かに集め、ビニール袋に入れます。飛び散らないよう注意します。
  4. 嘔吐物があった場所を、0.1%(1,000ppm)の次亜塩素酸ナトリウム溶液または同等の有効塩素濃度を持つ次亜塩素酸水で拭き取り、10分程度そのまま放置して消毒します。
  5. 消毒後、水拭きで仕上げます。
  6. 使用したペーパータオル、手袋、エプロンはすべてビニール袋に入れて密封し、廃棄します。
  7. 処理後は流水と石けんで丁寧に手を洗います。

ノンエンベロープウイルス汚染時の清拭手順

ノロウイルスはノンエンベロープウイルスであるため、アルコール消毒では十分な効果が得られません。嘔吐物や排泄物で汚染された場所の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(0.1%、1,000ppm)を用いるのが基本です。厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」でもこの方法が推奨されています。

次亜塩素酸水も、適切な有効塩素濃度の条件下であれば、嘔吐物処理後の仕上げの清拭で活用されているとされています。ただし、次亜塩素酸水は有機物(嘔吐物そのもの)に触れると効力が低下するため、まず嘔吐物を物理的に除去してから使用することが重要です。嘔吐物の大部分を取り除いた後の仕上げの清拭として、次亜塩素酸水を取り入れる現場が増えています。

また、嘔吐物が乾燥するとウイルスが空気中に舞い上がり、それを吸い込むことで感染する「塵埃感染」の危険があります。嘔吐物は乾く前にすみやかに処理することが鉄則です。

ここまで紹介した手順は、いずれも「対象物の表面(床・壁・家具など物品の表面)」を清拭するための一般的な流れです。人体(手指・口腔)への直接使用や、人がいる空間への噴霧を想定した手順ではない点に留意し、用途を「物品表面の清拭」に明確に限定して運用することが、保育現場での衛生管理では基本となります。

対象物表面の清拭という用途で使う次亜塩素酸水製品の例として、保育現場で取り入れる施設が増えているキエルキンの場合は、ペーパータオルに含ませて嘔吐物を覆う方法や、物理的除去後の物品表面の仕上げ清拭などにも活用できます。具体的な手順はキエルキンFAQ「嘔吐物処理にキエルキンは使えますか?」のページで解説されているので、現場で手順を整える際の参考としてご参照ください。

感染症発生時の対応フロー

日々の予防策を徹底していても、感染症の発生を完全に防ぐことは困難です。大切なのは、発生した際にいかに迅速かつ適切に対応し、拡大を最小限に抑えるかです。ここでは、感染症発生時の具体的な対応フローを解説します。

園内での発症者の隔離と保護者への連絡

園児に発熱や嘔吐・下痢などの症状が見られた場合は、まず他の園児から離れた別室(医務室や事務室など)に移動させ、安静にさせます。この際、症状のある園児を担当する職員を限定し、他のクラスとの接触を避けるようにします。

同時に、保護者へ速やかに連絡し、早めのお迎えと医療機関の受診を依頼します。連絡の際には、「園内で同じ症状の園児が他にもいるか」「現在の体温や症状」を正確に伝えると、保護者も受診時に医師へ適切な情報を提供できます。

行政機関への報告と記録の取り方

保育園で感染症が発生した場合、管轄の自治体(保健所など)への報告が必要になるケースがあります。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)や、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準に基づき、集団感染や特定の感染症が発生した場合には速やかな報告が求められます。

厚生労働省通知「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」によると、報告すべきケースの目安は次のとおりです。同一の感染症または食中毒の患者またはそれらが疑われる者が10名以上または全利用者の半数以上発生した場合、同一の感染症または食中毒による(疑い含む)死亡者または重篤患者が1週間以内に2名以上発生した場合、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われる場合です。加えて、麻しん・結核などは感染症法に基づき診断医師が1例でも保健所へ届け出る義務があります。

日常から「感染症発生記録」をつけておくことが大切です。記録すべき項目は、発症日、症状、クラス名、欠席者数、医療機関の診断結果、園内での対応内容です。これらの記録は、集団感染の早期察知にも、行政への報告にも役立ちます。

臨時休園・部分休園の判断基準

感染症の拡大状況によっては、臨時休園や部分休園(特定のクラスのみ閉鎖)の判断を迫られることがあります。判断基準は各自治体のガイドラインに従いますが、一般的な目安としては以下のとおりです。

部分休園を検討する目安としては、特定のクラスで同一の感染症による欠席者が増え、運営や保育の継続が困難と判断される場合が挙げられます(一般に欠席率が2割を超える頃から学級閉鎖を検討する例が多いとされますが、明確な法令基準はなく、自治体・園医の判断によります)。全園休園を検討する目安は、複数のクラスにわたって感染が広がり、園全体の運営が困難になった場合や、保健所からの休園指示がある場合です。

ただし、これはあくまで一般的な目安であり、最終的には感染症の種類・重症度・地域の流行状況を踏まえて、園医や保健所と相談のうえで判断することが重要です。保護者に対しては、休園の理由と期間の見通しを丁寧に説明し、家庭での感染予防についても情報提供を行いましょう。

保護者との連携で感染拡大を防ぐ

保育園の感染症対策は、園の中だけで完結するものではありません。家庭と園が情報を共有し、一体となって取り組むことで、はじめて効果的な感染拡大防止が実現します。

家庭での予防と登園基準の共有

保護者に対しては、入園時や年度初めの保護者会などで、感染症に関する基本的な知識と家庭での予防策を共有しておくことが大切です。具体的には、帰宅後の手洗いとうがいの習慣づけ、家族に感染者がいる場合の登園判断、流行期における規則正しい生活リズム(十分な睡眠と栄養)の重要性などです。

登園基準についても、入園のしおりや掲示物などで明確に共有しておきましょう。たとえば、「解熱後24時間以上経過してから登園」「嘔吐・下痢の症状が治まり、普通の食事が取れるようになってから登園」といった基準を、感染症ごとに示しておくと、保護者も判断に迷わずに済みます。

厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」では、感染症の種別ごとに登園の目安が定められています。インフルエンザであれば「発症後5日を経過し、かつ解熱後3日を経過するまで」、ノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎であれば「嘔吐・下痢などの症状が治まり、普段の食事がとれること」が登園再開の目安です。

感染症発生時の通知テンプレート活用

園内で感染症が発生した場合、保護者への迅速な情報提供が不可欠です。あらかじめ通知テンプレートを準備しておくと、発生時にすぐに配布できます。

通知に含めるべき情報は、発生した感染症の名称、園内での発生状況(「〇〇組で△名が同様の症状で欠席しています」など)、主な症状と潜伏期間、家庭で気をつけること(手洗い・消毒の徹底)、受診が必要な症状の目安、登園基準の再確認です。個人名は伏せつつ、保護者が自分の子どもの体調変化に注意を払えるよう、必要十分な情報を提供します。

連絡手段は、紙のお便りだけでなく、保育ICTシステムや連絡アプリを活用すると、より迅速に全保護者へ情報を届けることができます。

厚生労働省ガイドラインのポイント

保育園の感染症対策の拠り所となるのが、厚生労働省が策定した「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版、2021年8月一部改訂)」です。このガイドラインは、保育所の職員が感染症について正しい知識を持ち、適切な対応ができるよう作成されたものです。

「保育所における感染症対策ガイドライン」の要点

このガイドラインでは、感染症対策の基本的な考え方として、「感染源対策」「感染経路の遮断」「感受性者(宿主)対策」の3つの柱が示されています。つまり、病原体を持ち込まない(感染源対策)、うつさない(経路の遮断)、かかりにくい体をつくる(宿主対策)という3方向からのアプローチが重要であるとされています。

ガイドラインには、感染症ごとの潜伏期間・症状・感染経路・登園の目安が一覧表としてまとめられています。保育園の園長や看護職員は、このガイドラインを常に参照できる場所に備えておくことが推奨されています。2018年の改訂では、職員の感染症対策に関する研修の重要性や、園医との連携強化が特に強調されました。

第一種・第二種・第三種感染症と登園基準

学校保健安全法施行規則では、感染症を第一種・第二種・第三種に分類しており、保育園でもこの分類に準じた対応が求められます。

分類代表的な感染症登園基準
第一種エボラ出血熱、ペストなど
※基本的に日本国内での自然発生や流行は確認されていませんが、海外からの持ち込みリスクがあります。
治癒するまで
第二種インフルエンザ、麻しん、風しん、水痘、流行性耳下腺炎など感染症ごとに定められた基準日数を経過するまで
第三種コレラ、腸管出血性大腸菌感染症など医師が感染のおそれがないと認めるまで

たとえば、インフルエンザ(第二種)は「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日を経過するまで」が登園停止期間です。麻しん(はしか)は「解熱した後3日を経過するまで」、水痘(みずぼうそう)は「すべての発疹が痂皮化するまで」が基準です。

なお、これらに該当しない感染症(ノロウイルス性胃腸炎、溶連菌感染症、手足口病、RSウイルス感染症など)についても、厚生労働省のガイドラインで登園の目安が示されています。「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入して提出する」仕組みを整えておくと、登園判断がスムーズに行えます。インフルエンザとノロウイルスについての登園基準について詳しくは下記の記事をご参考ください。

保育園で導入したい最新の衛生管理ツール

日常的な手洗いや消毒に加え、環境そのものの衛生レベルを高めるためのツールを導入する保育園が増えています。ここでは、保育現場で活用しやすい衛生管理ツールを紹介します。

加湿器・空気清浄機による環境管理

先に述べたとおり、室内の湿度管理は感染症予防に大きく関わります。保育園では、各保育室に加湿器を設置し、湿度50〜60%を維持することが望ましいとされています。超音波式やスチーム式などの方式がありますが、タンク内の衛生管理が容易で、万が一倒れても火傷の心配がない方式を選ぶと安全です。

空気清浄機についても、HEPAフィルター搭載の機種は空気中の微粒子を効率的に除去できます。ただし、空気清浄機だけで感染症を防げるわけではありませんあくまで換気や消毒といった基本対策を補完するツールとして位置づけましょう。

加湿器や空気清浄機を運用するうえで意外と見落とされがちなのが、タンク内の水質管理です。水道水だけを入れて使用していると、数日でぬめりやカビ、雑菌が発生し、それらが室内に拡散されてしまう恐れがあります。タンクの清掃は週に複数回必要となり、保育士にとって大きな負担になりがちです。

加湿器・空気清浄機のタンクへ薬剤や除菌液を投入する運用は、機種ごとのメーカー推奨条件によって可否が大きく異なり、自己判断で液剤を入れることは故障や室内環境への影響につながる恐れがあります。基本となるのは「水道水をこまめに入れ替え、タンクや給水経路を取扱説明書に沿って週に複数回清掃する」運用です。投入の可否を検討する場合は、必ず加湿器メーカーの取扱説明書を確認したうえで判断してください。

液剤を選ぶ際に確認したいポイント

次亜塩素酸水を含む液剤を保育園で導入する際は、用途を「対象物表面の清拭」に明確に定めて運用することが基本です。WHO(世界保健機関)は、有効性・安全性が十分に確認されていない液剤を人がいる空間に直接噴霧することは推奨できないとしており、厚生労働省も塩素系消毒剤などを人がいる空間に噴霧することは原則として行わないよう注意喚起しています。眼・皮膚への付着や吸入による健康影響の懸念があるため、人がいる空間への直接噴霧は避け、対象物の表面を布やペーパーで拭き取る使い方を基本としてください。

液剤を選ぶ際のチェックポイントとしては、ウイルス・細菌に対する第三者機関の試験データが公開されているか、安全性試験のデータが提示されているか、製造年月日と使用期限が明示されているか、といった点が挙げられます。詳しい考え方や留意点については、「超音波加湿器での次亜塩素酸水の使用」に関する解説記事もあわせて参考にしてください。

キエルキンのような次亜塩素酸水製品は、おもちゃ表面の清拭やテーブル・ドアノブの拭き掃除など、対象物の表面に直接スプレーして布で拭き取る(広げる)使い方を基本としてください。アルコールのような強い匂いもないため、保育の現場で活用されている液剤のひとつとして紹介されています。

保育園の感染症対策でよくある質問(FAQ)

Q. 「保育園の洗礼」とは何ですか?どのくらいの期間続きますか?

A. 「保育園の洗礼」とは、入園後に子どもが次々と感染症にかかる現象を指す俗称です。集団生活を始めたことでさまざまな病原体に初めて触れるために起こります。個人差はありますが、多くの場合、入園から1年ほどで頻度は落ち着いてくるとされています。免疫の獲得には時間がかかるものですので、過度に不安にならず、園と連携しながら乗り越えていきましょう。

Q. アルコール消毒だけでは不十分ですか?

A. アルコール消毒は、インフルエンザウイルスなどのエンベロープウイルスには有効ですが、ノロウイルスやロタウイルスのようなノンエンベロープウイルスには効果が限定的です。保育園では多様な感染症が流行するため、アルコール製剤だけに頼るのではなく、用途に応じて医薬品・医薬部外品の塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)や、雑貨カテゴリの次亜塩素酸水製品など、対象物・場面に応じた液剤を選ぶ運用が現場では推奨されます。

Q. 次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムの違いは?

A. 名前は似ていますが、化学的な性質は大きく異なります。次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリ性で、漂白・消毒に使われますが、皮膚への刺激や金属腐食性があります。一方、次亜塩素酸水は弱酸性(pH5.0〜6.5)で、有機物と反応後は水に戻る性質を持ち、素材を傷めにくい点が特長です。保育園では、場面に応じて使い分けることが大切です。

Q. 感染症が流行している時期でも登園させてよいですか?

A. お子さま自身に症状がなければ、基本的には登園可能です。ただし、家庭での検温・体調チェックを毎朝行い、少しでも異変を感じたら無理をさせないことが大切です。園でも登園時の健康観察を実施していますので、気になる症状がある場合は担任に相談してください。

Q. 子どもが感染症にかかった後、いつから登園できますか?

A. 感染症の種類によって登園基準が異なります。インフルエンザであれば「発症後5日を経過し、かつ解熱後3日を経過するまで」が目安です。登園基準は厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」や各園の規定に基づいていますので、まずは医師の診断を受け、園の登園基準を確認してください。

まとめ:日常の習慣化が園と子どもを支える基本

保育園の感染症対策は、特別なことではなく、正しい知識に基づいた日常の衛生管理の積み重ねがもっとも重要です。手洗い・消毒・換気・健康観察の基本を徹底し、消毒剤は対象となる病原体に合わせて適切に使い分けること。万が一、感染症が発生した場合には、隔離・報告・消毒の対応フローに沿って迅速に行動すること。そして、園と家庭が情報を共有して一体となって取り組むこと。この3つの柱が、子どもたちの健康を守る土台になります。

次亜塩素酸水は、適切な有効塩素濃度の条件下であれば、ノンエンベロープウイルスを含む幅広い病原体に対する有効性が公的試験で報告されており、有機物と反応した後は水に戻る性質を持つ液剤です。テーブル・ドアノブ・おもちゃといった対象物表面の清拭用途として、保育の現場でも取り入れる施設が増えています。日々の物品表面の清拭にキエルキンのような次亜塩素酸水製品を活用することで、アルコールだけでは対応しきれない場面の補完として役立ちます。

お子さまの健康と安全な保育環境のために、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事の内容は一般的な衛生情報であり、医療行為に関する助言ではありません。お子さまに症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

※情報は2026年4月時点のものです。感染症の流行状況やガイドラインは随時更新される可能性がありますので、最新の情報は厚生労働省や各自治体の公式サイトでご確認ください。