お子様が体調を崩された時、「風邪菌をもらってきちゃって…」と話されている方はいらっしゃいませんか?
実は、「風邪菌」という言葉は、医学的には存在しないのです。今回は、子育て中の皆さんが知っておきたい、風邪とインフルエンザの正しい知識について、分かりやすくご説明いたします。
「風邪菌」は存在しないって本当?
日々の会話の中で、当たり前のように使われている「風邪菌」という言葉。ですが、これは誤解なんです。
「菌」 とは、細菌(バクテリア) や 真菌(カビ) を指す言葉です。一方で、風邪の原因 はほとんどが ウイルス なのです。そのため、正確には 「風邪ウイルス」 と呼ぶのが正しい表現なんですよ。
かつて世界的に大流行したパンデミックが、日本では「スペイン風邪」や「ロシア風邪(Aソ連型)」のように「〇〇風邪」と訳されていた歴史があります。これにより、医療業界の一部でも、インフルエンザが風邪の一種と認識されることがあったようです。
しかし、感染症の原因となるウイルスは、風邪とインフルエンザでは全く異なります。
風邪 の原因となるウイルスには、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルスなど、様々な種類があります。実際、風邪の90%以上はウイルスが原因 なのです。インフルエンザ の原因は「インフルエンザウイルス」です。
お医者様が「風邪」と診断する時、それはウイルスが原因で起こる「上気道炎」、つまり鼻から喉にかけての炎症を指します。
風邪は、様々な感染症をまとめた「呼吸器疾患の総称」であり、「風邪症候群」とも呼ばれることがあります。
風邪症候群を引き起こす主なウイルスの割合は以下の通りです。
その他、細菌由来(マイコプラズマやインフルエンザ菌など)の風邪もあります。
ライノウイルス:30〜40%
パラインフルエンザウイルス:15〜20%
コロナウイルス:10%
RSウイルス:5〜10%
インフルエンザウイルス:5〜15%
これらの割合は調査機関や時期によって多少変動する可能性があることをご留意ください。
「ウイルスってどのくらい飛ぶんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
ウイルスは非常に小さく軽いため、空気中に漂いやすい性質があります。
特に、インフルエンザウイルスやはしかのウイルスは、非常に小さく(インフルエンザウイルスは約0.1µm)、空気中に長時間浮遊して感染する「空気感染」 を起こしやすい特徴があります。
空気感染は、非常に感染力が強いので注意が必要です。
1μm(マイクロメートル)は1mmの1000分の1の大きさです。
風邪の原因となるライノウイルスやアデノウイルスなども、空気中に浮遊できるくらいの大きさです。
ただし、インフルエンザウイルスに比べて感染力は低めです。例えば、くしゃみをしても2m程度離れていれば飛沫感染のリスクは低いとされています。
しかし、ウイルスが付着したものを触った手で口や鼻を触ることで感染する「接触感染」には、十分に注意してくださいね。
これで安心!風邪とインフルエンザの症状と特徴の見分け方
風邪が重症化するケースはありますが、一般的に命に関わることは稀です。一方で、インフルエンザは、乳幼児や小さなお子様、ご高齢の方など、抵抗力の弱い方が感染すると、最悪の場合、重篤な状態に至ることもあります。
風邪とインフルエンザの違いを知ることは、お子様やご自身の健康を守るためにとても大切です。 以下に、それぞれの症状と特徴をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
(※症状には個人差があり、年齢によっても異なります。一般的に、大人の方がお子様よりも治癒が早い傾向があります。)
風邪の症状と特徴
感染経路: 咳やくしゃみなどによる飛沫感染、鼻の粘膜から侵入し増殖します。
初期症状: 鼻や喉の乾燥感。
進行後の症状: 鼻水、鼻詰まり、微熱。
※熱が出ない方もいらっしゃるため、周りの方にうつしやすい場合があります。
症状の進行: ゆっくりと進行します。
潜伏期間: 1〜3日。通常5日〜1週間で完治します。
流行時期: 一年中感染の可能性があります。
ワクチン: 風邪予防のワクチンはありません。
※熱が出ない方もいらっしゃるため、周りの方にうつしやすい場合があります。
インフルエンザの症状と特徴
感染経路: 咳、くしゃみ、手に付着した唾液からの接触感染、空気感染
初期症状: 急な発熱、寒気、頭痛
進行後の症状: 全身の倦怠感、高熱、関節や筋肉の痛み
症状の進行: 急激に悪化します
潜伏期間: 2〜5日。10日程度で完治します
流行時期: 空気が乾燥する時期(主に冬場)に感染の可能性が高いです
ワクチン: インフルエンザ予防のワクチンがあります

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「インフルエンザにはワクチンがあるのに、風邪にはないのはどうして?」と疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
先ほどもお話ししたように、風邪の原因となるウイルスは非常に多岐にわたります。代表的なライノウイルスだけでも100種類以上が確認されており、それぞれ異なる種類のウイルスに感染する可能性があるため、何度も風邪をひいてしまうのです。
これほど多くの種類のウイルスが存在するため、ワクチンを特定して開発することが非常に難しいのが現状です。
また、「わざわざワクチンを作って予防しなくても、自然治癒に任せてもそこまで大ごとにならない」という考え方もあるため、風邪のワクチンは開発されていません。
インフルエンザウイルスは大きくA型、B型、C型に分けられ、強さはA型が最も強く、C型が最も軽度です。冬場に流行して大きな問題となるのは主にA型です。
インフルエンザA型の特徴
人に感染するたびにウイルスの形が変化しやすいため、進化のスピードが速く、予防接種のワクチンが効かないケースも少なくありません。呼吸器系の合併症を引き起こすこともあるため、特に注意が必要です。
インフルエンザB型の特徴
比較的決まった形で出現するため、予防接種のワクチンで流行を抑えることが可能です。A型とは異なり、腹痛や下痢など消化器系の症状が出やすい傾向がありますが、症状はA型に比べて軽度で済むことが多いです。
インフルエンザC型の特徴
多くの方が子供の頃に感染し、一度感染すると免疫がつくため、その後はC型に感染することはほとんどありません。軽度の風邪のような症状で、気づかないうちに治っている場合もあります。
インフルエンザA型のワクチンは、流行が予測されるウイルスの型に合わせて作られます。予測が当たれば、感染しても症状が軽度で済んだり、感染自体を防げたりする効果が期待できます。
しかし、インフルエンザウイルスは人以外の動物(水鳥など)にも生息しており、そこで進化を繰り返して形を変えることがあります。
そのため、予測と異なるウイルスが流行してしまうと、予防接種のワクチンが効きにくく、集団感染が起こってしまうことがあるのです。
しかし、重症化を防ぐ効果がワクチンにはあるので是非シーズンごとに接種されることをオススメします。
インフルエンザや風邪には「抗生剤」は効かないって本当?
「風邪やインフルエンザで病院に行ったときにもらう薬は何だろう?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
まず、基本的なこととして、抗生剤(抗生物質)は細菌には効果がありますが、ウイルスには効果がありません。 つまり、ウイルスが原因である風邪には抗生剤は効かない のです。
「では、解熱剤や炎症を抑える薬は何?」と思われますよね。それらは抗生物質とは全く別のもので、症状を和らげるために処方されます。
感染症の中には、ウイルス性のものと細菌性のものがあります。風邪はウイルス性ですが、風邪に似た症状を示す細菌性の感染症もあります。発熱などの症状だけでは、医師がウイルス性か細菌性かを100%見分けることは非常に難しいのが現状です。
そのため、医師は症状や検査結果などから確率的に判断し、細菌性の感染症と診断された場合に抗生剤を処方します。ただし、軽度の場合には、自然の免疫で治るのを待つという選択をすることもあります。
現在処方されている抗インフルエンザ薬(タミフルやイナビルなど)は、ウイルスを直接殺す薬ではありません。これらの薬は、体内でウイルスが増殖するのを抑え、病状の悪化を防ぐ ことを目的としています。
補足:抗生物質は細菌に直接作用し、殺菌します。
インフルエンザの兆候が見られた場合は、できるだけ早く病院を受診することをおすすめします。その理由は、感染初期は体内の免疫がウイルスを排除するスピードよりもウイルスの増殖スピードが速いため、どんどんウイルスが増えてしまうからです。
しかし、一般的に発症から約48時間を境に、体の免疫がウイルスの増殖スピードを上回り、徐々に回復に向かいます。
例えるなら、最初は人間(ウイルス)が速く走りますが、最終的には自転車(免疫)が人間を追い越すようなイメージです。
ですから、できるだけ早く「人間」の勢いを止めるためにも、インフルエンザが疑われる症状が出たら、早めにかかりつけの病院を受診してくださいね。
以上、『風邪菌』と呼んでいる人は知らないインフルエンザと風邪の違いについてお話ししました。
今回ご紹介したポイントをまとめます。
・「風邪菌」という言葉は存在せず、風邪の原因は主にウイルスです。 「風邪ウイルス」と覚えておきましょう。
・風邪とインフルエンザは異なるウイルスによって引き起こされる別の病気です。
・インフルエンザは症状が急激に悪化し、重症化のリスクがあるため、早期受診が大切です。
・風邪もインフルエンザも、原因がウイルスの場合は抗生剤は効きません。
・インフルエンザの治療薬は、ウイルスの増殖を抑えるものであり、ウイルスを殺す薬ではありません。
正しい知識を持つことは、お子様やご自身の健康を守る第一歩です。日頃から手洗いやうがいキエルキンを合言葉にしっかり行い、体調の変化には敏感に対応して、健康的な毎日をお過ごしください。
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