水道水に塩素を入れる理由とその殺菌力の次亜塩素酸とは

お水は循環している

【追記2018年7月4日】

昔から私たちは菌やウイルスの対策として「塩素」を使用していました。塩素は水道水にも含まれており、世界中で感染症予防の用途で使用をされています。

日本では、水道水に消毒のために塩素が入れ始めたのが1890年頃と言われていますが、本格的に始動したのは第2次世界大戦後GHQが大号令をかけて行われました。

当初から考えると130年近い月日が流れていますが、今でも重要な消毒剤として、銭湯、プール、下水道など幅広く使用されています。

塩素の殺菌力は次亜塩素酸からきている

実は、「塩素」と一括りにされていますが、水と塩素が反応してできた物質によって消毒することができるのです。その物質を「次亜塩素酸」と呼びます。

そもそも「塩素」は、スウェーデンの実験科学者のシューレによって発見され、イギリスの科学者によって「塩素(Chlorine)」と命名されました。

それから研究が進められて次亜塩素酸(Hypochlorous acid)、次亜塩素酸ナトリウム(Sodium hypochlorite)、次亜塩素酸カルシウム(Calcium hypochlorite)次亜塩素酸カリウム(Potassium hypochlorite)が消毒、消臭、漂白などの効果があることが分かってきました。

現在、一般家庭で使用されている漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)が一番身近にある塩素です。

もちろん、食品加工の現場でも危険物質の取り扱いにはなりますが、食中毒を抑えるために細菌、カビなどを除菌、除去できるため厚生労働省が示している大量調理施設衛生管理マニュアルにも記載されています。

一方、食塩水や塩酸を電気分解するまたは、次亜塩素酸ナトリウムと酸を混合して製造する弱酸性の次亜塩素酸(HOCL)の使用もよく見かけるようになりました。

いわゆる「塩素」の消臭作用や除菌作用はこの「次亜塩素酸」によって起きている作用で、pH(ペーハー)によって大きく効果が変わってきます。

食品添加物として厚生労働省としても「次亜塩素酸」は認めています。その中でも原料や製法についても細かくレギュレーションが決められております。

厚生労働省がまとめた次亜塩素酸水について安全性から効果までについてこちらからどうぞ!

補足:pHとは、水溶液の性質をあらわすひとつの単位で、中性はpH7、これより低いと酸性(pH1〜7以下)、高いとアルカリ性(pH7以上〜14)と呼びます。

次亜塩素酸水溶液で消毒

次亜塩素酸ナトリウムによる水道水の消毒はなんのため?

冒頭でも、水道水と塩素消毒の関係について述べましたが、塩素はバクテリアの殺菌だけでなく、他にも以下の重要な役割を担っています。

・アンモニアを取り除くこと

・水に溶けているマンガンと鉄を取り除くこと

・着色水の脱色をすること

水は様々な物質が溶ける溶液で私たちが一般的にいうお水にはH2Oだけでなくミネラルや生活排水などの有機物が溶けています。水道水として飲めるようにするために下水、上水処理を行い循環させる必要があります。

次亜塩素酸ナトリウムでアンモニアを取り除く

私たちの生活した後にでるお水にはたくさんのアンモニアがたくさん含まれています。農業では窒素の肥料を与え吸収できずに排出される、動物が出す尿や汗などによってアンモニアを含んでいます。

これらの処理をする時に、次亜塩素酸ナトリウムを注入することで消毒とアンモニアを分解することができます。

次亜塩素酸ナトリウムはアンモニアと反応してクロラミン(NH2CL:窒素上に塩素原子を持つ窒素化合物)を生成します。しかし、クロラミンは過剰に入れた次亜塩素酸ナトリウムによってさらに完全に分解または、極小量になり、アンモニアは取り除かれてしまいます。

処理のpHによってモノクロラミンNH2Cl(弱アルカリ性)、ジクロラミンNHCl2(弱酸性)、トリクロラミンNCl3(酸性)が生成されます。

処理する時には中性〜弱アルカリ性で処理します。これらと次亜塩素酸が反応して分解され、窒素ガスとなって飛散します。

参考千葉県水道局「塩素消毒についての補足資料」

これらクロラミンの殺菌効果は次亜塩素酸水溶液と比較すると大腸菌で1900~5300倍、ウイルスで214倍、ジアルジア(寄生虫)で16~23倍低いことが実験結果より分かっています。

一方、クロラミンは水中において残留効果が長いため、次亜塩素酸水よりも安定して殺菌力を持ちます。

次亜塩素酸ナトリウムでマンガンと鉄を取り除く

鉄とマンガンは人間にとって必要なミネラルですが過剰に摂取すると胃腸障害や血色素症などになります。

また、食品や飲料の風味を損なう原因となってしまうため適切にお水を処理する時に適切に取り除きます。もともとは岩や土壌などから地下水溶けて川に流れこむためにマンガンや鉄などが含まれています。

マンガンも鉄も次亜塩素酸ナトリウムを加えることで濾過することで取り除くことができます。

次亜塩素酸ナトリウムで着色水の脱色

染料・染色工場や食品工場など着色した水を排水する際には水質汚濁防止法に基づいて環境基準に満たして処理した後に排水しなければいけません。

加えて、着色したお水を環境基準に満たしているからといってただ排水するのではなく、着色を基準値まで下げる努力が環境配慮のために必要とされています。

そこで、着色水の脱色を次亜塩素酸ナトリウムで行います。

それ以外にはオゾン、酸化チタン、活性炭などが脱色する手法として用いられますが、安価で安定であることよりメジャーな脱色方法です。

参考長岡技術科学大学「染色工程廃水に含まれる着色成分の物理化学的処理」

参考:環境省「水質汚濁防止法に基づく対策の概要」

以上、水道水に塩素を入れる理由とその殺菌力の次亜塩素酸ついてご紹介しました。