次亜塩素酸はきゅうりに発生する「うどんこ病」に対して予防可能か?

次亜塩素酸できゅうりのうどんこ病対策になるのか?

次亜塩素酸水溶液は残留性がなく、有機物に接触することによって分解することから、非常に安全な資材として、医療、食品などの分野で広く使用されています。

 

農業の分野でも、食品の安全性に関心が高まり、農薬、環境負荷の軽減が叫ばれている中で、次亜塩素酸水溶液を使用農業従事者も増えつつあります。

下記の記事に特定農薬として認められている内容をまとめています。

 

特定農薬としても次亜塩素酸水を認定!農業でも菌・ウイルス対策として活用

そこで、岐阜県農業技術センターによる次亜塩素酸を用いたきゅうりのうどんこ病、べと病の予防効果についてご紹介いたします。

強酸性電解水と弱酸性次亜塩素酸水溶液の効果の違い

強酸性電解水(pH2.7~2.9、有効塩素濃度35~75ppm)を作物に散布すると、葉に散布障害 (葉焼け症状)が発生しやすく、 実際に使用する上で大きな問題となっています。

 

他方、弱酸性次亜塩素酸水溶液は、強酸性電解水よりも、生物等に及ぼす影響がほとんどありません。また、強酸性電解水は有効塩素濃度の低下が著しく早く、酸化して分解しやすいですが、弱酸性次亜塩素酸水溶液の方がより安定しています。

 

補足:うどんこ病とは、植物にカビ(糸状菌と呼ばれるわれるカビ)が住みついて葉っぱが白くなる伝染性の病気のことです。

べと病は、葉脈と葉脈の間に囲まれた部分が角形で黄褐色のステンドグラス状の病斑となり、葉裏にはカビが生える伝染性の病気です。

強酸性電解水と次亜塩素酸水溶液のうどんこ病に対する予防効果

弱酸性次亜塩素酸水溶液 (pH5.8~6.2、有効塩素濃度 25~35ppm)のキュウリうどんこ病、べと病に対する予防効果について検討しました。

 

実験は、下記の方法により比較しました。

 

きゅうりの栽培様式は畝と畝の間180cn、 株間45cmの1条植えとして、つる下げ栽培で行いました。

つる下げ栽培は主枝12節摘心、伸張側枝10~12節の1株3本仕立てとしました。

処理は、噴霧装置を用いて、水道水、弱酸性次亜塩素酸水溶液、強酸性電解水の3種類を週1回5分問行いました。

10側枝について1側枝当たり展開葉10葉のうどんこ病、べと病及び散布障害の発生状況について調査しました。

 

その結果、うどんこ病の発病度は水道水区が高く、強酸性電解水は低く推移しました。弱酸性次亜塩素酸水溶液は、強酸性電解水と水道水の中間程度の発病度をしました。

 

また、べと病の発病度も同様に、水道水一番が高く、強酸性電解水は低く推移しましたが、その差はうどんこ病より小さくわずかでした。

 

そのため、べと病に対しては若干の予防効果が示されましたが、うどんこ病に対する効果と比べるとわずかであり、実際に用いるべきかどうか疑問が残ります。

 

散布障害の発生は、強酸性電解水で著しく、弱酸性次亜塩素酸水溶液では、ほとんどみられませんでした。

 

結論として、弱酸性次亜塩素酸水溶液は、強酸性電解水より効果が劣るものの予防効果を示し、散布障害 (葉焼け症状)はわずかでした

弱酸性次亜塩素酸水溶液の効果的な散布間隔は?

うどんこ病の予防に適した弱酸性電解水の散布間隔について検討しました。

 

弱酸性次亜塩素酸水溶液を週7回散布、週2回散布、週1回散布、化学合成の農薬(トリフミン水和剤3000倍希釈)2週間隔散布の4種類で比較試験を行いました。1回の散布は5分間行いました。

 

こちらも10側枝について1側枝当たり展開葉10葉のうどんこ病及び散布障害の発生状況を実験しました。

 

その結果、うどんこ病の発病度は、週2回散布が化学合成農薬と同等ないし、やや少ない発病度で推移しましたが、週1回散布では、試験期間の後半、発病度が高まりました。

 

しかし、同じ実験を再度行う結果が異なりました。うどんこ病の発病度は週7回散布で化学合成農薬とほぼ同等で処理期間を通して低く推移する傾向を示しましたが、週2回では発病度が高まりました。

 

生育については、散布障害の発生が顕著な週 回区で葉長、薬幅、葉色、側枝節数、側枝長 ともに化学合成農薬 区より劣りました。 週2回散布では葉長、葉幅はやや小さくなりましたが、側枝節数、側枝数に差はみられませんでした。

 

これらの同じ実験で結果が大きく異なった理由として、散布開始時のうどんこ病の発病度の差によるものと考えられました。つまり、1回目の試験の開始時期にうどんこ病はほとんど発生していなかったのに対して、2回目の試験では、散布開始時期からすでにうどんこ病が発生していたためと推察されました。

 

結論として、より効果的に予防するためには、発病前から散布していくことが大切であり、週2回程度の散布で予防できる可能性が示唆されました

 

予防の効果を高めるために展着剤と次亜塩素酸水溶液を混合する

弱酸性次亜塩素酸水溶液の予防効果をより高めることを日的に、展着剤の添加によってうどんこ病の発病抑制効果に及ぼす影響ついて検討しました。

 

試験をしたA~Fの6種類の展着剤の中では、展着剤 D、E、Fは弱酸性電解水に添加した直後に、その有効塩素濃度を低下させました。特に、展着剤D、Fは1時間後には添加前の8~12%まで低下させました。 他方、展着剤A、B、Cは加用直後の有効塩素濃度の低下が少なかったです。

 

展着剤 A(有効成分ポリアルキレングリコールアルキルエーテル27%)、

展着剤B( ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル20%)、

展着剤C(ポリオキシエチ レンオクチルフェニルエーテル 50%)、

展着剤D(ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪 酸エステル50%)、

展着剤E(パラフィン24%)、

展着剤F(ポリナフチルメタンスルホン酸ジアルキルジメチルアンモニウ18%、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル50%)

 

うどんこ病の発病度は、水道水>弱酸性次亜塩素酸水溶液>展着剤A添加 >展着剤B添加 >展着剤C添加、ので推移しました。

 

つまり、弱酸性に展着剤を添加することによって、弱酸性次亜塩素酸水溶液のみで散布するよりも予防効果が高まることが分かりました。また、散布障害は全ての試験においてほとんど認められませんでした。

 

このように予防効果が向上した要因は、弱酸性次亜塩素酸水溶液の効果に加え、湿展性や浸透性を高めるという展着剤本来の働きと展着剤自体の予防効果の双方によるものであることが考えられます。

 

ただし、最も効果の高かった展着剤Cはきゅうりに対する農薬登録がないため、展着剤Bが最も適当かと思われます。

 

また、きゅうりのつる下げ栽培において、うどんこ病の予防には弱酸性次亜塩素酸水溶液のみでは週2回の散布が必要でしたが、展着剤の添加によって週1回にまで散布回数を削減できることが分かりました。

 

参考:岐阜県農業技術センター「弱酸性次亜塩素酸水溶液によるキュウリうどんこ病防除に関する研究」

 

きゅうりだけでなくその他の植物病理に対しての防除として活用できるか是非今後も調べていってほしいですね。

 

以上、次亜塩素酸はきゅうりに発生する「うどんこ病」に対して予防可能かについてご紹介しました。