養鶏場で「次亜塩素酸水」を活用しよう!効果と安全性について

追記

追記しました (2019年6月14日)

畜産場では、たくさんの動物が同じ場所に過密に飼育しているため鳥インフルエンザや口蹄疫などの感染症の危険が高いです。

鳥インフルエンザの疑いがある場合、感染が拡大するのを防ぐために同じ農家の家畜の殺処分、発生農場から半径10 km圏内の農場での家畜の移動制限などが行われるため、莫大な被害がでます。

今までは、家畜の感染症対策としてワクチンを投与することで抑制してきましたが、過剰のワクチン接種はウイルスや菌の耐性の問題となります。

畜産分野のだけでなく医療分野でも薬剤耐性を持つ菌により院内感染の原因にもなると指摘されており、ワクチンの使用量の削減が勧められています。

キエルキン
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感染してから応対すると莫大のコストがかかるため、事前に感染症予防することでコストを抑制し、飼育環境を改善することができます。

ここで、昨今注目されている弱酸性次亜塩素酸水溶液をご紹介いたします。畜産の現場で行われた実験結果に基づき、弱酸性次亜塩素酸水溶液の効果や安全性についてもご紹介していきたいと思います。

養鶏場で「次亜塩素酸水溶液」の活用

養鶏用の衛生管理の中で感染症が広がる媒体になるものが鶏用の飲料水です。

養鶏場内では複数の鶏が共用する飲料水器があり、鳥インフルエンザ、ニューカッスル病、サルモネラ病等の感染症に感染した鶏の鼻汁や唾液中に含まれる細菌やウイルスが給水器内に混入した場合、飲料水を介して感染が拡大する可能性があります。

通常の水道水には有効塩素が含まれておりますが、濃度が0.5ppm程度と低いため、有機物が混入するとすぐに失活してしまいます。

そのため、農林水産省は、「飲用に適したものまたは、消毒したものを用いる」と規定されています。

養鶏場内の飲料水として弱酸性次亜塩素酸水溶液を適応した実験

養鶏場内の給水システムは給水タンク、給水配管、飲料水器の3工程に分かれており、養鶏場内での飲水には水道水を使うことが推奨されています。しかし、消毒せずに水道水を使用した場合、飲料水器の著しい菌数の増加が認められました。

給水タンク内では水道水に含まれる残留塩素が検出されましたが、飲料水器までは残留塩素濃度が維持できないこと、飲料水が有機物の混入により汚染することで菌数の増加スピードが速まることが明らかとなりました。

そこで、給水システムに弱酸性次亜塩素酸水溶液(有効塩素濃度50ppm、pH6~6.5)を適応して細菌に対する殺菌効果を水道水と比較しました。

弱酸性次亜塩素酸水溶液を使用した給水システムの生菌数を調査した結果、給水タンク、給水配管のすべての細菌は検出限界以下となりました。飲料水器では細菌は検出しましたが水道水に比較して顕著に細菌数を抑制できました。

次亜塩素酸水溶液も水道水同様に残留塩素濃度が低下した理由は、給水システム自体の汚れや、養鶏場内の糞、えさ、埃などの有機物が混入するためです。有効塩素濃度を維持するためには定期的な清掃やメンテナンスが必要です。

次亜塩素酸水溶液によりサルモネラ菌、緑膿菌、大腸菌など感染症の原因になる細菌を抑えることで養鶏場内の衛生管理に有効であることが分かりました。

一方注意点として、養鶏場ごとに給水システムが異なるため、それぞれ有効塩素濃度やpHの調整をする必要があります。
しかし別の養鶏場で行った実験結果によると、次亜塩素酸水溶液を14.6ppmに維持できるよう調整した場合は、どの場所でも大腸菌やサルモネラ菌等の病原細菌の検出がない事が分かりました。

次亜塩素酸水のスプレー噴霧によりどれくらい濃度が低下するか

2014年にアイオワ大学の研究チームによって「次亜塩素酸を空気中に噴霧した時の遊離塩素の低下と養鶏場における浮遊細菌に対するその殺菌効果」について発表されました。

15ppmと60ppmの濃度の次亜塩素酸水溶液を用意して、異なる18℃、25℃、32℃の温度で噴霧し、スプレーノズルから0.25cm、50 cmで収集した次亜塩素酸水溶液の濃度の変化(有効塩素濃度の低下)について分析しました。

その結果、18℃では1cm当たり0.79〜0.87%、25℃で1.08〜1.15%、32℃で、1.35〜1.49%有効塩素濃度が低下することが分かりました。

また、鶏舎に浮遊する細菌をこれら収集した溶液に浸し、30秒後、2分後、5分後の生菌数を計算しました。すると、16.8ppm以上の濃度で処理した場合30秒で、13.8ppmの場合は2分、 7.2ppmの場合は5分で、細菌は完全に殺菌できました。

キエルキン
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結論として、鶏舎からの空中浮遊菌は、適切な次亜塩素酸水溶液の濃度と接触時間により効果的に不活性化することが可能ということが分かりました。

ただし次亜塩素酸水溶液を噴霧する際、高温環境では有効塩素濃度の低下が起きやすく、距離が遠くなると殺菌に時間がかかるので、その点は注意が必要です。

鶏の産卵率、生育率、育成率、生存率への影響は?

過去4年分の水道水のみで育成した場合と弱酸性次亜塩素酸水溶液を飲料水として使用した産卵率、生育率、育成率、死亡率について比較しました。

産卵率は全期間を通して有意差は認とめられませんでした。弱酸性次亜塩素酸水の方が育成率は有意に高く、特に餌付け初期に有意差が現れました。この理由として、餌付け初期はヒナの抵抗力が弱く弱酸性次亜塩素酸水溶液の病原細菌抑制できたと考えられます。

つまり、抵抗性の弱いヒナの育成時期や、感染症が発生しやすい時期など、期間限定で「次亜塩素酸水溶液を飲料水にする」だけで感染症の抑制や生産性の向上、死亡率の低下が期待できると言えます。

また、飲料水だけでなく、養鶏場内の噴霧や洗浄なども併用することにより、総合的に養鶏場内の衛生環境を改善し、感染症の拡散予防や生産性の向上に貢献することが可能であることが示唆されました。

次亜塩素酸水溶液噴霧での養鶏場での消臭について

鶏も人間と同じように臭い中での生活はストレスを感じてしまい、感染症への抵抗力が低下してしまいます。

アンモニア、メチルメルカブタン酸、硫化水素、トリメチルアミンなどが臭気の原因で、特にアンモニアが25ppmの濃度を超える時には換気や汚染物除去などの対策を行わなければいけません。

そこで、次亜塩素酸水溶液50、80、150、200ppmの濃度での噴霧実験を行いました。その結果、濃度が高いほど消臭効果が高くなりました。

鶏に対する次亜塩素酸水溶液の安全性

今でも、次亜塩素酸ナトリウムが畜産の現場で衛生対策のために使用されております。

有効塩素濃度50~400 ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を28日間採卵鶏に飲水させた場合、400ppm以下の濃度であれば鶏の産卵率、生産性、血液性状などに大きな影響を及ぼさないことが報告されています。

同様に、弱酸性次亜塩素酸水溶液を飲水させた場合、体重については飼育期間を通して有意差は認められませんでした。しかし、臓器重量、血液性状について試験区と対照区とでは下記に有意差が見られました。

1週目→卵巣、クレアチニン

7週目→肝臓、卵巣

24週目→ヘマトクリット値

64周目→脾臓、輸卵管、アミラーゼ、ナトリウム

但し、これらの臓器重量、血液性状ともに一部の項目で有意差が認められましたが、いずれの有意差も一時的であり、全期間を通して目立った違いはほぼなく、弱酸性次亜塩素酸水溶液の飲水による影響は実験内では見当たらないという結果でした。

以上より、弱酸性次亜塩素酸水溶液を長期間鶏の飲料として利用ができることが明らかとなりました。

種卵の消毒法「ホルマリン燻製と「次亜塩素酸水溶液の比較

ホルマリン燻蒸について

養鶏場からの卵は、到着後直ちにホルマリン燻蒸20分間、あるいは消毒薬液(40 ℃の1000倍逆性石けん液等)3分間浸漬により消毒することが、農林水産省の鶏卵のサルモネラ総合対策指針に示されています。

ホルマリン燻蒸とは、湿度70%、温度18℃以上に保ち、40g/m3のホルマリン(ホルムアルデヒド37%以上含有)と20gの過マンガン酸カリウムを反応させ、ガスを発生させる方法です。この反応では発熱があるので、火災の発生を防止するため、大型の容器を使用し、容器周辺には可燃物があってはいけません。

養鶏場消毒では、過マンガン酸カリウム等による化学反応によらず、家庭用電気釜を利用して、加熱によりガスを発生させることもできます。

なお、ホルムアルデヒドは刺激性のガスで、吸入や接触により人の健康に有害な影響を与えるので、燻蒸作業に際しては、ガスマスクや接触防止の衣服等を着用して危害防止に努める必要があります。

また、ホルマリンは、発癌性があるため作業者への健康被害が懸念されております。そのため、ホルマリン発生源の密閉化や局所排気装置などの発散抑制措置の設置や定期的な作業環境測定が義務付けられました。

各々の消毒手法で生菌数と孵化率の比較

各々の消毒方法を行い、生菌数の割合を調べる実験と消毒した種卵の孵化率についても実験を行いました。

弱酸性次亜塩素酸水溶液(有効塩素濃度200ppm、pH6~6.5)を超音波噴霧器2台(噴霧量合計570ml/h)90分間とホルマリン燻蒸10g/mで20分処理後70分間換気を行いそれぞれ比較しました。

実験結果として、弱酸性次亜塩素酸水溶液噴霧による卵表面の除菌率は、平均99.83%、ホルマリン燻蒸を行った場合の卵殻表面の除菌率は、99.73%でした。

結論として、卵殻表面に付着した一般生菌に対してもどちらも高い殺菌効果が認められました

これより、弱酸性次亜塩素酸水溶液の噴霧によりサルモネラ菌や卵殻表面菌に対して消毒効果を有しており、これら卵殻汚染の原因菌に対しても効果があることかが分かりました。

また、弱酸性次亜塩素酸水溶液噴霧による種卵に対する悪影響は認められませんでした。貯卵日数の違いによる対熟孵化率の違いも見られず、安定した孵化率が得られています。

キエルキン
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次亜塩素酸水溶液のメリットとして、噴霧終了後直後から換気することなく作業することができ、安全性も優れています。しかし、ホルマリン燻蒸の場合燻蒸時間は短くてすみますが、長い時間換気をする必要があり実ます。

なお実用化に際して、弱酸性次亜塩素酸水溶液は噴霧粒子が卵の表面に接触することで殺菌効果があるため、種卵の配置やトレイの形状などにより殺菌のむらがでてしまう可能性があるため改良が必要です。

まとめ

養鶏場内で感染拡大するとその殺処分などは莫大のコストがかかるため事前に感染症予防することでコストを抑制し、飼育環境を改善する必要があります。また、抗生物質を使用することによる耐性菌問題に対しても環境除菌することが重要です。

弱酸性次亜塩素酸水溶液を鶏への長期間飲用水に利用した結果、給水システム内の細菌数を低く抑えることが可能で、感染症予防に適しています。より高い有効塩素濃度での利用が効果的であることが示唆されました。

また、生産性については餌付け初期の育成率に向上が見られ、生存率や産卵率は水道水を飲水させた場合と同等という結果でした。臓器や血液性状などの影響も一時的に有意差がありましたが、全期間を通しては目立った違いが認められませんでした。

鶏卵の消毒に関してホルマリン燻製法の代替として弱酸性次亜塩素酸水溶液の噴霧した結果、除菌率、孵化率等の有意差がなく且つ安全に利用できることが分かりました。

以上、養鶏場で「次亜塩素酸水」を利用する際の効果と安全性についてご紹介しました!

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